いつもコラムをお読みくださり、ありがとうございます。
自己承認力コンサルタント協会 代表理事の山本まさのです。
私が担当するコラムでは、「自己承認力Ⓡ」に関する項目を中心に、様々なテーマを取り上げています。
私たちは日々、自分自身と対話をしています。
「うまくできなかったな」「今日は頑張った!」そんなふうに、自分にかける言葉ひとつで、心の状態は大きく変わります。
そのときに大切になるのが、「自己承認」と「自己受容」という2つの心のあり方です。
一見、似ているように見えるこの2つ。
でも実は、心にかける役割がそれぞれ違うのです。
今回のコラムでは、心の土台を育てる「自己承認」と「自己受容」について、わかりやすく解説しながら、実生活で活かせる高め方をお伝えします。

自己承認とは?
自己承認とは、「ありのままの自分を、価値ある存在として認めること」です。
これは、成功した時だけでなく、失敗した時や自信をなくしているときにも「そんな自分でも大丈夫」と言える、心の姿勢です。
事例:ミスをした部下に対する自己承認
ある会社員のAさんは、プレゼン中に緊張して話を飛ばしてしまいました。
以前なら「なんてダメなんだ」と自分を責めていましたが、研修で自己承認を学んでいた彼はこう考えました。
「緊張したけど、前より準備はできていた。話の骨子は伝えられた。よく頑張った、自分。」
このように、結果だけでなく努力や過程を評価することで、自分への信頼感が育ちます。
自己承認ができる人は、挑戦することへの恐れが減り、成長のスピードが加速します。
自己受容とは?
一方、自己受容とは「感情や弱さ、欠点も含めた“そのままの自分”を受け入れること」です。
ネガティブな感情や短所に対して、「こう感じるのも自分なんだ」と思えることが、自己受容の第一歩です。これは、自分に甘えることではなく、感情や弱さに誠実に向き合う姿勢です。
事例:怒りを感じた自分を否定しない
Bさんは、同僚の言葉に強く反応して怒りを感じてしまいました。以前は「大人なのに怒るなんて」と自己嫌悪に陥っていましたが、最近はこう考えるようになりました。
「あの言葉で自分が傷ついたんだな。怒りが湧いたのも、私が大切にしている価値観があったからだ。」
感情を責めるのではなく、「感じた自分」に寄り添うことで、心が落ち着き、冷静な対応ができるようになります。
自己承認と自己受容の違いとは?
項目 | 自己承認 | 自己受容 |
意味 | 自分を「認める」こと | 自分を「受け入れる」こと |
対象 | 行動・努力・存在 | 感情・弱さ・短所 |
アプローチ | 評価・肯定 | 共感・許容 |
結果 | 自信・行動力の向上 | 安心感・心の安定 |
自己承認は「認めること」
自己承認とは、自分の行動や努力、存在そのものを「認めること」です。
たとえば、
「今日は大変だったけど、最後までやりきった。よく頑張ったね」
「あの失敗は悔しかった。でも挑戦した私、すごいよ」
このように、自分の行動や姿勢を、肯定的に見つめなおすのが自己承認です。
それは、自信につながり、次の一歩を踏み出すエネルギーになります。
自己受容は「受け入れること」
一方の自己受容とは、自分の感情や弱さ、短所も「そのまま受け入れること」です。
たとえば、
「今日はなんだかイライラしてしまった。でも、そんな日もあるよね」
「落ち込んで動けなかった。無理に元気にならなくてもいいよ」
そんなふうに、ありのままの自分にそっと寄り添う。
それが自己受容です。
自分を責めず、否定せず、心にやさしいまなざしを向けることで、安心感と安定が生まれます。
どちらか一方ではなく、両方を
自己承認だけでは、「できる自分」しか認められなくなってしまうかもしれません。
自己受容だけでは、「まあいいか」で終わってしまい、成長のエネルギーが湧きにくいこともあります。
だからこそ、両方が必要なのです。
「今日の私はイライラしていた。でも、そんな日もあるよね」(自己受容)
「それでも今日を乗り越えた。私はよくやったよ」(自己承認)
このように、どちらか一方だけでなく、両方の視点を持つことが、心を癒し、自分らしく前に進むための力になります。
なぜ自己承認と自己受容が必要なのか?
現代社会では、「もっとできるようにならなければ」「他人より劣ってはいけない」と、自分を評価で見がちです。
しかし、それだけでは“できない自分”に出会った時に、自信が大きく揺らぎます。
実は、自己承認や自己受容ができている人ほど、ストレス耐性が高く、人間関係も良好だと言われています。
職場ではもちろん、家庭や地域活動の中でも、他者とより良い関係を築くためには、まず「自分自身との関係性」がとても重要なのです。
自己承認・自己受容の高め方
ここからは、今日から実践できる「自己承認力・自己受容の高め方」をご紹介します。
自分にやさしい言葉をかける
一日の終わりに、自分にこう問いかけてみましょう。
「今日の私、どんなことを頑張った?」
「どんな感情を持った? それはどんな自分を表していた?」
例えば、
- 「あの場面、よく我慢したね」
- 「失敗したけど、チャレンジしたのは偉かったよ」
- 「落ち込んでもいいよ。それだけ大事にしていたんだね」
このようなセルフトークを習慣にすることで、自分を受け止める力が高まります。
他人との比較から卒業する
「〇〇さんはもっとできるのに」「私はまだまだ…」と他人と比べる思考は、自己承認を妨げます。
比べるなら“過去の自分と今の自分”にしましょう。
「一年前は、人前で話すのが怖かった。でも今は少し慣れてきた。」
「落ち込んでも立ち直るスピードが早くなった。」
こうした小さな成長を見つけることが、自己信頼につながります。
感情を書き出してみる
ノートやスマホのメモアプリを使い、「今日感じた感情」を書き出してみましょう。
怒り・悲しみ・焦り・喜び……どれも「自分らしさの一部」です。
感情を文字にすることで客観視でき、「ああ、自分はこんなふうに感じたんだ」と認めやすくなります。
完璧を手放す勇気を持つ
「完璧じゃない自分を受け入れる」ことが、自己受容の真髄です。
誰しも弱さや欠点を持っています。それを「ダメなこと」と捉えるのではなく、「人間らしい部分」と見てあげましょう。
まとめ
自己承認と自己受容は、どちらも“自分に対するまなざし”をやさしくするための大切な心のスキルです。
自分を「認める」ことで、自信を持って前に進める。
自分を「受け入れる」ことで、安心して立ち止まることもできる。
どちらも人生をしなやかに生きるための“心の軸”となります。
私たちは誰もが、完璧ではないし、いつも前向きでいられるわけではありません。
だからこそ、「そんな自分でいいよ」と受け入れ、「それでも私は大丈夫」と認める。
心にやさしく、でも力強く。
自己承認と自己受容、この2つをバランスよく育てながら、日々を過ごしていきたいですね。