こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、本当にありがとうございます。
「人材育成って、結局なに?」
・何をどこまで教えたらいいのか分からない
・部下に何回言っても伝わらない
・やり方が合っているのか不安
こういった“育成のしんどさ”をご経験されているのではないでしょうか。
自分の感覚で部下を育てている方も多いと思います。
そもそも、誰にも教わっていない人材育成を急に任されたところで、実践できるはずがないですよね。
今回は、企業がまず理解しておくべき「人材育成の本質」を5つの意味から整理し、
さらに私自身が経験した“育成に苦しんだ日々”を交えながら、
上司としてのあなたが少しでもラクに、そして誇りを持って部下と向き合えるようなヒントをお届けします。

人材育成は、ある日突然はじまる
企業では、こんなことが日常的に起こっています。
「明日から新人が来るから、頼んだよ」
「今日からこの後輩の教育を任せるね」
「あなたが一番経験があるから、育成よろしく」
こんなふうに、
心の準備も知識の準備もないまま“育てる側”に立つ方が大半ではないでしょうか。
管理職になる前は、自分の目の前の業務に一生懸命向き合ってきたはずです。
そこからある日突然、後輩・部下の育成が始まるのです。
そして多くの方が、自己流で部下育成を進めます。
みんなが自己流でやっていては、迷って、失敗して、部下が育たずに辞めてしまう…
そうなるのも当然です。理論も、方法も、型も教わっていないのですから。
たまに、自己流の部下育成が時代と相手の気質にぴったりマッチして、部下が急激に成長することもあるでしょう。しかし、多くの管理職が部下育成に苦戦しながら、「結果は出さなければならない」と日々戦っています。
なぜ管理職は人材育成に悩むのか
多くの人が他者に対しては、「仕事が出来る人=育成もできる」と思い込んでいます。
しかし、実際にやってみると全く別物と気がつきます。
仕事ができる能力と、人に伝える能力。
相手を育てる能力。価値観の違う人を受け入れる能力。
これは全て別のスキルであり、結果を出すためには、本来は学びと練習が必要です。
にもかかわらず、「できるだろう」という前提で任されるため、
管理職の方は次第に疲れ果てていきます。
はっきり言って、「自分の仕事だけに集中していた方が楽」ですよね。
本を読んでも、ネットの記事を読んでも、自分が抱える事例にぴったり当てはまらない。
頭ではわかるけれど、実践になると動けない。
育成は「行動習慣」でありトレーニングが必要なのです。
育成がうまくいかないのは、能力不足でも性格の問題でもなく、
“やり方を知らないだけ”なのかもしれません。

私が一番苦しんだ「価値観の合わない相手」の育成
ここで、少しだけ私の経験をお話しします。
私が管理職として働いていた頃、一番苦しいと感じたのは 「価値観の合わない部下を育てること」 でした。
もし、あなたが部下と価値観が合うなら、とてもラッキーです。
・話が通じ、意図を汲んでくれる
・コミュニケーションも滑らか
・説明すればすぐ理解してくれる
そんな相手だと、育成は驚くほどスムーズに進みます。
しかし、価値観が違う部下は、まるで宇宙人。相手が別世界にいるように感じることがありました。
「なぜそれが必要なんですか?」
「この手順の意味が分かりません」
「言われた通りにやる理由がピンと来ないです」
正直に言うと、当時の私は心の中で何度も思いました。
「いいから、黙ってやってくれ」と…。
人材育成に困った私は、心理学を学び始めます。どうしても相手を変えたかった。
しかし、学んでわかったのは
「人材育成の苦しさの原因は、自分にある」ということでした。
・価値観の違いを許容できない器の小ささ
・相手を受け止める余裕のなさ
・伝え方のスキル不足
・自分のやり方を“正解”だと思い込みすぎていたこと
などなど…全部、自分側の問題でした。これを受け入れるのは、とても痛かったです。
しかし、この気づきは私の対人関係を変え、育成観を変えました。
人材育成は、手法を学んでトレーニングすれば、誰でも、誰に対しても出来るようになります。
人材育成とは何か?企業が理解しておくべき5つの意味
ここからは、人材育成の本質を5つに整理してお伝えします。
1. 人の価値を引き出すこと
人材育成は、“人を変えること”や“人をコントロールすること”ではありません。
その人の持っている「能力を引き出すこと」です。
「どうしてできないんだろう」ではなく、
「どうすれば能力が発揮できるだろう」に視点を変える。
これが育成の第一歩です。
2. 企業文化・価値観を未来へつなぐ「継承」
人材育成とは、会社の
・大切にしていること
・価値観
・働き方の姿勢
などを次の世代に渡すことでもあります。
だからこそ、上司自身の言葉で語ることが最も影響力を持つのです。
自分の仕事を自信を持って、部下に語ることが出来ますか。
仕事をする姿で見せ、言葉で伝え、継承する。上司は、このスキルを学び続ける必要があります。
3. 再現性を生む「育つ仕組みづくり」
あの上司は、部下が育つ。あの上司は、部下が辞めていく。
我流で人材育成を行っていると、どうしても差が出てしまいます。
部下を持つ全員が
・明確な指示の出し方
・仕事の基準
・評価の軸
・進捗確認の仕方
これらのスキルをトレーニングしていけば、誰が育てても部下が育つ“再現性”が生まれます。
だからこそ、企業側の仕組みづくりが欠かせないのです。
4. 心の成長を支える「心理的育成」
育成はスキルだけを成長させる仕事ではありません。
部下が「私にもできる」と実感できる瞬間をつくること。
そのためには、
・成功体験
・努力の承認
・挑戦のハードルを低くする関わり
・言葉の扱い
こうした心理的なサポートが不可欠です。
その土台には、やはり上司が自分の頑張りを認められる状態(=自己承認力)が必要となるのです。
5. 上司自身が育つプロセスである
人材育成で最も大切なのは、実はこれかもしれません。
育成を体験することは、自分を育てることにつながる。
相手と向き合うたびに
・伝え方
・受け止め方
・価値観の差
・自分の癖
・自分の弱さ
これらに気づき、上司は少しずつ成長します。
私自身も、価値観が違う部下と向き合うたびに、
悔しくて悲しくて、何度も挫折し、何度も涙しながら成長しました。
育成とは、部下と自分の両方を育てる時間なのです。

若手を育てたいなら、まず“上司を育成する”こと
今の企業の多くは、「若手が育たない」という悩みを抱えています。
そこで、必死に若手社員に対するエンゲージメントやキャリアアップの研修を行います。
たしかに、本人へのアプローチも絶対に必要です。
しかし、その前に育てるべきなのは、若手ではなく、指導係・上司の側です。
上司が、部下を相手に
・どう伝えるか
・どう寄り添うか
・どう任せるか
・どう承認するか
・どう受けとめるか
この基本を学んでいるでしょうか?
社外の取引先様やお客様相手ではなく、社内の人間に対する接し方を伝えていますか。
弟子でも家族でも友達でもない、その距離感を伝えているでしょうか。
若手が育つ環境をつくるのは、上司です。
企業がまず取り組むべきは、「部下を育てられる上司」を育てること。
これができれば、若手は自然と育ちます。
今日からできる3つの小さな一歩
いかがでしたでしょうか。人材育成は、担当する上司一人が背負うものではありません。
企業が育成方法を提供し、
上司が自己承認力を整え、
部下が安心して挑戦できる環境がある。
この三つがそろった時、組織は初めて“人が育つ文化”が根付きます。
最後に、今日からできる「育成をスムーズにする一歩」をご紹介します。
- 部下の成長を振り返ってみる
「初日に比べて、随分できることが増えているよね」と、
できていない点ではなく「できるようになった点」に意識を向けてみましょう。 - 価値観の違いを“自分の成長材料”として受け止めてみる
「そんな考えもあるんだな。勉強になる」と、
一度自分の引き出しを増やす材料として受けとめてみてください。 - これまで育成に向き合ってきた自分を労う
「逃げずによくやってきたよね」と、
上司としての頑張りを、まずは自分自身が認めましょう。
この3つをするだけで、
上司としての心の負担は大きく減っていきます。
人材育成は、数字としての結果が見えにくく、評価もされにくいものです。
だからこそ、今頑張っている自分自身を、ぜひ自分で認めて褒めましょう。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)