
はじめに
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
自己承認力コンサルタント協会 代表理事の山本まさのです。
「やればできる!」と思える力――心理学では「自己効力感(Self-Efficacy)」と呼ばれます。これはアルバート・バンデューラが提唱した概念で、自己効力感の高さが行動や挑戦への意欲を左右すると考えられています。
バンデューラは自己効力感の源として「達成経験」「代理経験」「言語的説得」「生理的・情動的状態」の4つを挙げました。その中でも、実は多くの人が見落としがちな要素が「生理的・情動的状態」です。
「緊張で心臓がドキドキする」「不安で手が震える」――こんな体や心の反応が、自己効力感を下げてしまうことがあります。しかし逆に、体や感情を整えることができれば、自己効力感はぐんと高まり、「やればできる」と自分を信じて行動できるのです。
今回は、自己効力感を高めるための 生理的・情動的状態の整え方5選 をご紹介します。
呼吸を整える ― 自律神経をリセットする
緊張すると呼吸が浅くなり、心拍数が上がり、体は「戦うか逃げるか」のモードに入ります。この状態では冷静さを欠き、自己効力感も下がりがちです。
そこで効果的なのが「深呼吸」や「腹式呼吸」です。
- 4秒かけて鼻から息を吸う
- 4秒息を止める
- 8秒かけて口からゆっくり吐く
この「4・4・8呼吸法」は自律神経を整えるのに有効です。面接やプレゼンの直前に行うと、心が落ち着き「自分は大丈夫」と思えるようになります。
ポジティブ感情を意識的につくる
気分が沈んでいるときは「どうせ失敗する」という考えが浮かびやすく、逆に気分が明るいと「できるかもしれない」と思いやすくなります。
意識的にポジティブ感情をつくるための方法はシンプルです。
- お気に入りの音楽を聴く
- 香り(アロマ)で気分を変える
- 仲間と笑顔で会話をする
「楽しい」「安心」といった感情は、そのまま自己効力感を押し上げます。心理学の研究でも、笑顔をつくるだけで気持ちが前向きになる「表情フィードバック効果」が確認されています。
これは「表情は感情を表すだけでなく、感情をつくり出す」という心理学の考え方。
たとえば、笑顔をつくるだけで気持ちが前向きになりやすいことが研究で確認されています。
つまり「笑顔は気分を変えるスイッチ」。意識して笑顔をつくることで、自己効力感を押し上げることができます。
身体のサインをリフレーミングする
「心臓がドキドキしている=失敗する前兆」と考えると不安は増大します。しかし同じドキドキを「挑戦へのエネルギー」「体が準備OKのサイン」と捉え直すと、効力感が高まります。
この「リフレーミング(意味づけを変える)」は自己承認力Ⓡのスキルのひとつでもあります。
例えば:
- 「汗が出てきた」→「体が集中している証拠」
- 「声が震える」→「大切に思っているから自然に出る反応」
身体のサインを敵ではなく味方に変えることで、心が前向きに切り替わります。
小さな成功体験を直前に思い出す
「前にもできた」という記憶は、緊張する場面で大きな支えになります。
例えばプレゼン前に、過去に発表がうまくいった経験や、上司に褒められた瞬間を思い出してみましょう。小さな「できたこと」の積み重ねは、緊張を和らげ、「きっと今回もできる」と自己効力感を高めます。
当協会が推奨している「できたこと日記」も、この効果を日常的に育むための方法です。毎日小さな成功を書き留めておくことで、必要なときにその記録を自信の源として活用できるのです。
環境を整える ― 外側から内側を支える
生理的・情動的状態は、環境に強く影響されます。
- 散らかった机 → 気持ちが落ち着かず効力感ダウン
- 静かな場所・温かい照明 → リラックスして効力感アップ
また、応援してくれる仲間や安心できる人がそばにいる環境も大切です。人は「ひとりで頑張る」より「支えがある」と感じるほうが挑戦しやすくなります。
自己承認力Ⓡの3つの柱(自己肯定感・自己効力感・スキル)の中でも「コミュニケーションスキル」がここで活きてきます。信頼関係を築いておくことが、自分の効力感を支える大きな力になります。
まとめ
「生理的・情動的状態」を整えることは、自己効力感を高める近道です。
今回ご紹介した5つの方法:
- 呼吸を整える
- ポジティブ感情をつくる
- 身体のサインをリフレーミングする
- 成功体験を思い出す
- 環境を整える
これらはどれもすぐに実践できるものばかりです。
自己効力感が高まれば、「やればできる」と自分を信じられるようになります。その積み重ねが、自己承認力Ⓡを育み、より豊かで前向きな人生を築く力になるのです。
実践ワーク:できたこと日記
今日から実践できるシンプルな方法として「できたこと日記」をおすすめします。
書き方の例
- 今日、深呼吸で気持ちを落ち着けられた
- 不安を「準備のサイン」と捉え直せた
- 小さなことでも「できた!」と記録できた
毎日の積み重ねが「自分はできる」という確信につながります。