~「やればできる」と「できた」の循環が自己承認力Ⓡを育てる~

いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
一般社団法人自己承認力コンサルタント協会 代表理事の山本まさのです。

私たちは日々、「できるかな」「やってみよう」「上手くできた!」といった感情の中で生きています。その中で、自信を支える大切な心理要素が「自己効力感」と「有能感」です。

「やればできる!」と思えるとき、人は行動する勇気を持てます。
一方で、「できた!」と実感できた瞬間、自分を少し誇らしく感じますよね。

この2つの感覚――実は心理学では、
「自己効力感」と「有能感」という異なる心の働きとして説明されます。

どちらも“自信”を支える大切な力ですが、
それぞれの違いを理解し、日常で意識することで、
自分を認め、信じて前に進める「自己承認力Ⓡ」がぐんと育ちます。

このコラムでは、「自己効力感」と「有能感」の概念の違いと、それをどう活かせば「自己承認力Ⓡ」が高まるのか、をお伝えします。

自己効力感とは:「やればできる!」という自信の源

「自己効力感(Self-Efficacy)」は、アメリカの心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念です。
定義としては、「自分はこの状況で、望む行動をとり、成果を出せると信じる感覚」。
つまり、「行動を起こす前の自信」を意味します。

自己効力感は、「これからの行動に対して、どのくらい自信があるのか」を示す未来志向の信念です。たとえば、次のような場面を思い浮かべてください。

このように、「自分ならきっとできる」と信じられる感覚が自己効力感です。
自己効力感が高い人ほど、行動的で、失敗を恐れず、チャレンジを続ける傾向があります。

バンデューラは、人が行動を起こす時には「できると思えること」が最も大切だと述べています。なぜなら、「どうせ自分には無理」と思った瞬間に、脳は努力をやめてしまうからです。脳はエネルギーを節約しようとし、挑戦の意欲が下がってしまいます。

逆に、「できるかもしれない」と思えると、脳はエネルギーを生み出し、行動を支えるのです。

有能感とは:「できた」と感じる満足の実感

一方、「有能感(Sense of Competence)」は、アメリカの心理学者デシとライアンの自己決定理論(Self-Determination Theory)の中で提唱された概念です。

意味は、「自分はうまくできている」「役に立っている」と感じる達成の実感
これは、努力の結果として得られる「手ごたえ」や「満足感」を表しています。

たとえば、こんな瞬間です。

  • 「プレゼンがうまくいって上司に褒められた」
  • 「子どもが“ありがとう”と言ってくれた」
  • 「仕事で自分の提案が採用され、チームに貢献できた」

このような「うまくできた」「誰かの役にたった」という体験が、有能感を育てます。有能感は、「結果」から得られる実感であり、「できた」という過去志向の感覚なのです。

また、有能感が高まることで「自分は価値のある存在だ」と思えるようになり、自己肯定感を支える重要な要素にもなります。

自己効力感と有能感の違い

2つの概念を比べると、時間軸と心理の方向性が異なります。

比較項目自己効力感(Self-Efficacy)有能感(Sense of Competence)
意味「できる」と信じる力「できた」と感じる実感
時間軸未来志向(行動前)過去志向(行動後)
根拠自分の信念・予測成果・承認・成功体験
心理効果挑戦心・行動力・粘り強さ満足感・自尊心・幸福感

自己効力感は“行動を生み出す力”、
有能感は“行動を続ける力”。
この2つがバランスよく循環することで、人は自信を深め、行動を続けられるのです。

自己承認力Ⓡとの関係

当協会では、「自己承認力Ⓡ」を
『自分を認め、自分を信じて前に進めるチカラ』
と定義しています。

この「前に進めるチカラ」の中心にあるのが、まさに「自己効力感」です。「できる」と信じる力があるからこそ、人は一歩を踏み出せます。そして、その行動の結果として「できた」「やれた」と感じることで「有能感」が育ちます。

  • 自己効力感 … 自分を信じる力(“やればできる”)
  • 有能感 … 自分を認める力(“できた”)

この2つがつながると、次のような自己成長のサイクルが生まれます。

1️⃣ 自己効力感(やればできる) → 行動を起こす
2️⃣ 行動 → 成果 → 有能感(できた!)
3️⃣ 有能感 → 自己承認(自分を認める)
4️⃣ 自己承認 → 自己効力感をさらに強める

この好循環を意識することが、「自分を信じて前に進む」ための最大のエネルギーになります。

自信を育てる5つのヒント

ここからは、日常の中で「自己効力感」と「有能感」を育てるための5つのヒントをご紹介します。

小さな成功体験を積み重ねる

一度に大きな目標を達成しようとせず、
「できた」と思える小さな一歩を大切にしましょう。
「今日は5分だけ続けられた」「1人に笑顔で挨拶できた」――それで十分です。

「やればできる」と言葉にする

言葉には思考を変える力があります。声に出して自分に言い聞かせるだけでも、脳は「できるモード」に切り替わります。「自己効力感」は言葉から育ちます。
「どうせ無理」ではなく、「やってみよう」「工夫すればできるかも」に言い換える習慣を持ちましょう。

成果を振り返り、記録する

一日の終わりに「できたこと」を3つ書き出してみましょう。
「自己承認力Ⓡ日記」や「できたことノート」を活用するのも効果的です。
振り返りは“有能感”を育てる最高の習慣です。

他者からの応援を受け入れる

「よくやったね」「頑張ったね」「助かったよ」という言葉を素直に受け取ることも大切です。
他者からの承認は、有能感を育て、自分を認める力につながります。
「自己承認」は、実は「他者承認」の受け取りからも育ちます。

挑戦する自分を褒める

結果が出る前でも、「挑戦した」自分を認めること。
たとえ思うようにいかなくても、「やってみた」こと自体が価値です。
これが次の“やればできる!”へとつながります。

おわりに:「やればできる」と「できた!」が未来を動かす

「やればできる」と信じる力(自己効力感)と、
「できた!」と感じる力(有能感)。

この2つの感覚が交互に育つとき、
私たちは確実に“自分を信じられる人”に変わっていきます。

今日できた小さなことを認めることから、すべてが始まります。
その積み重ねが、あなたの未来を力強く動かしていくのです。

📘 まとめ

  • 「やればできる」=自己効力感(未来志向の自信)
  • 「できた!」=有能感(過去からの達成感)
  • 2つの循環が「自己承認力Ⓡ」を高める
  • 小さな成功を認めることが、最初の一歩