いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
(一社)自己承認力コンサルタント協会 代表理事の山本まさのです。

「やればできる!」――そう思えるとき、私たちは行動にエネルギーを感じます。
一方で、「どうせ自分には無理」と感じるとき、挑戦する前から心がストップをかけてしまうこともあります。

この「できる」「できない」という感覚を心理学では セルフ・エフィカシー(Self-Efficacy/自己効力感) と呼びます。
心理学者アルバート・バンデューラによって提唱された概念で、
「自分ならこの課題を達成できる」という自己への信頼感を意味します。

自己効力感が高い人は、困難な課題にも前向きに取り組み、途中で挫けずに行動を続けます。
反対に、自己効力感が低い人は、挑戦する前から「無理かもしれない」とあきらめてしまいがちです。

では、この「自己効力感」を高めるには、どのような方法があるのでしょうか。
バンデューラは、自己効力感の源となる4つの要因を示しました。
ここでは、その4つの要因をもとに、日常で実践できる「自己効力感を高める方策」をご紹介します。

達成経験 ― 小さな成功を積み重ねる

最も強力に自己効力感を高めるのが、「達成経験」です。
つまり、「やってみたらできた!」という実体験です。

小さな成功を積み重ねることで、脳は「自分にはできる」という確信を強めていきます。
例えば、

  • 一日5分だけ早起きできた
  • 会議で一度だけ意見を言えた
  • 今日は人に笑顔で挨拶できた
    このような“小さな成功”こそが、自己効力感を育てる大きな肥料になります。

失敗しても構いません。
「うまくいかなかった」と落ち込むより、「ここまではできた」と部分的な達成を認めましょう。
そして、その日の「できたこと」をノートやアプリに記録します。
これが当協会推奨の 「できたこと日記」 です。

書いて振り返ることで、「昨日より一歩進めた自分」を実感できるのです。

代理経験 ― ロールモデルから学ぶ

次に、他者の姿から学ぶ「代理経験」です。
人は、似た立場の人が成功するのを見ることで、
「自分にもできるかもしれない」と感じるようになります。

職場で、同僚が新しい提案をして評価された。
講座で、同じ受講生が発表に挑戦した。
SNSで、同世代の人が資格試験に合格した――。

このような場面に触れることで、自分の中の“挑戦スイッチ”が入ります。

当協会では、研修や講座の中で「ロールモデルの共有」を大切にしています。
「挑戦した人の話を聞く」「成功のプロセスを可視化する」ことで、
参加者が“自分の成長イメージ”を持てるようになるのです。

また、他者の努力を見て学ぶことは、同時に“他者承認”のトレーニングにもつながります。
「人の頑張りを認める」ことができる人ほど、自分の成長にも優しくなれるのです。

言語的説得 ― 励ましとセルフトークの力

三つ目の源は、「言葉の力」です。
人からの励ましや肯定的な言葉が、私たちの「自分を信じる力」を後押しします。

「あなたならできる」
「前よりも成長しているよ」
「失敗しても、挑戦したことがすばらしい」

こうした言葉を受け取ると、人は自然と自信を取り戻します。
また、自分自身にかける言葉――いわゆる「セルフトーク」も非常に重要です。

「どうせ無理」と言葉にした瞬間、脳は本当に行動を止めてしまいます。
反対に、「まだ途中」「きっとできる」と言葉にするだけで、行動意欲が戻ってくるのです。

職場や家庭、地域でも「承認の言葉」を交わす文化を育てていくことが、
個々の自己効力感を高め、チーム全体の信頼感を強めます。

当協会が大切にしている 「自己承認力Ⓡ」 の中でも、
この「言語的説得」は、他者との関係を通じて自己信頼を育てる大切な柱の一つです。

生理的・情動的状態 ― 心身を整える

最後に、「心と体の状態」です。
心身が整っていないと、いくら能力があっても「できる気がしない」と感じてしまいます。

緊張や不安は、自己効力感を下げる最大の敵です。
一方で、リラックスしているときは、前向きな感情が湧き、
挑戦に対する意欲も高まります。

そのためには、

  • 睡眠・食事・運動など基本的な生活リズムを整える
  • 呼吸法やストレッチで、心を落ち着かせる
  • 感謝日記や音楽、自然とのふれあいでポジティブ感情を増やす
  • プレッシャーを感じたら、「緊張=成長のサイン」とリフレーミングする

こうした“心身のセルフケア”が、自己効力感を支える土台になります。
「自分を信じて行動する力」は、健康な体と穏やかな心の上にこそ育つのです。

自己承認力Ⓡとの関係

当協会が提唱する「自己承認力Ⓡ」とは、
**「自分を認め、自分を信じて前に進めるチカラ」**です。

この力を高めるには、3つの要素――
①自己肯定感(自分の存在を肯定する力)
②自己効力感(自分の行動を信じる力)
③スキル(特にコミュニケーションスキル)
――をバランスよく育てることが必要です。

つまり、自己効力感を高めることは、自己承認力Ⓡ全体を強化することにつながります。
自分の力を信じることができれば、他者の力も信じられるようになり、
挑戦と成長の循環が生まれていくのです。

まとめ

「やればできる」は育てられる

セルフ・エフィカシー(自己効力感)は、生まれつきの性格ではありません。
日々の体験や言葉、環境の中で少しずつ育てていく“力”です。

小さな成功を積む(達成経験)
似た人の成功を見る(代理経験)
励ましの言葉を受け取る(言語的説得)
心と体を整える(生理的・情動的状態)

この4つを意識して生活の中に取り入れてみてください。

明日からできる実践ヒント

  • 今日の「できたこと」を3つ書いてみる
  • 自分に似た挑戦者をSNSで探してみる
  • 仲間に「あなたのおかげで助かった」と伝える
  • 深呼吸を3回して、今の自分を整える

これらを続けることで、「自分にはできる」という感覚が少しずつ育ちます。
そしてその積み重ねが、自己承認力Ⓡ=自分を信じて前に進める力 を強くしていくのです。