こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「部下が動かない」
「指示したのに、なんでやっていないの?」
「もっと考えて動いてほしい…」

こんな風にお感じになったことはありませんか?

真面目にがんばっている上司ほど、「なぜ部下は動かないのか?」と悩んでしまうもの。
しかし、ここで一度立ち止まってみましょう。

部下が動かないのではなく、
「動ける仕組みが整っていないだけ」かもしれません。

今回はそんな視点から、部下が自然と動けるようになるための「7つの仕組み」についてお届けします。


「考えて動いて」は、実は無理なお願い?

私自身、かつては部下に対して「もっと自分で考えて動いて!」と思っていた上司のひとりでした。
「なんでできないの?」「なんでわからないの?」と、イライラしていました。

そんなとき、あちこちに部下育成方法を学びに行って気がついたのです。

「今の私の視野と経験があるからできていることは、部下にはまだ備わっていない力なんじゃないか?」

よく考えたら、部下は上司よりも視野が狭くて当たり前。
経験も、判断力も、情報の整理力も、まだ発展途上。

役職が異なるのですから、自分と同じように動けるわけがないのです。
「考えて動け」と感覚に頼るような指示を出しても、動けないのは当然ですよね。

こんな話をすると、たまに「自分は部下の役職のときにはもっと動けた」と仰る方がいます。
過去の自分と部下を比べているのです。
しかし、時代・育った環境・仕事の優先度・価値観が違います。

そして何より、その「もっと動けた自分」は、そのときの上司やチーム、仕組みによって支えられていたのではないか?と振り返ってみてほしいのです。
知らず知らずのうちに「自分はできた」記憶だけが強調されて、周囲の支援や背景が抜け落ちてしまっていることもよくあります。

また、昔よりも今の職場は「正解がひとつではない仕事」や「心理的な安全性」を求められる場面が増えています。
行動するには、“納得できる理由”と“安心できる土台”が必要なのです。

つまり、部下が動かないのではなく、動けるように整えることが、上司としての新しい役割なのですよね。


仕組みがあれば、人は動ける!

こんなご経験はないでしょうか?

・マニュアルを見ながら作業したらスムーズにできた
・段取り表があったおかげで、ミスがなかった
・報連相のフォーマットがあると、情報共有がしやすい

これらはすべて、「仕組み」があるからうまくいった例です。
部下が動けないとき、叱るよりも先に、「仕組みがあるか?」を確認することが、実は一番の近道なのです。


動けるチームに共通する「7つの仕組み」

ここからは、部下が自然と動けるようになるために整えておきたい7つの仕組みをご紹介します。

1. 目的を伝える仕組み

「これやっといて」とお願いすると、部下は「作業」になります。
でも、「なぜそれをやるのか」「この仕事のゴールは何か」を伝えることで、仕事が「意味のある行動」に変わります。

◆ 目的共有のためのツールやミーティングはありますか?
◆ なぜその仕事が大事なのか、言語化していますか?

目的が見えると、部下は納得して動けるようになります。


2. 手順を見える化する仕組み

例えば、「このデスクをきれいにしておいて」とだけ伝えると、部下は戸惑います。
でも、「このデスクは、この写真のような状態にしてね。理由は来客があるからで、方法はこの順番で進めて」と伝えれば、だいたいうまくいきます。

◆ 手順書・マニュアル・チェックリストなどのツールは整備されていますか?

新人さんが入ってきた日でも「今日から動ける」ような仕組みが理想です。


3. フィードバックの仕組み

部下は、指示されてやったことに対して「これでよかったのか」がわからないと不安になります。
部下の仕事にフィードバックをしているでしょうか。
ちょっとしたことでも「ここがよかった」「この部分は次回こうするといいかも」と、上司から伝える仕組みが大事です。
ぜひ、「答え合わせ」をする場を設けてみてください。

◆定期的な面談、1on1、フィードバックの時間は設けられていますか?


4. 報連相の仕組み

報告・連絡・相談を「自分のタイミング」でやってもらうのではなく、仕組みとして設計することがポイントです。

たとえば
◆日報で報告するルールを決めておく
◆相談は週1の時間をあらかじめ確保
◆チャットやツールで気軽に共有できる導線をつくる

これだけで、部下の“抱え込み”や“報告漏れ”は激減します。


5. 挑戦と失敗を許容する仕組み

部下が「動けない」のではなく、「動いて失敗したくない」と感じている場合もあります。そんなときは、上司が「何かあればフォローするから」と伝えること、そして挑戦を称える空気をつくることがとても重要です。

◆チャレンジして失敗したときにも、「承認」を大事にしていますか?


6. 上司が見本を示す仕組み

部下は「言葉」より「行動」を見ています。

上司がマニュアル通りに仕事をしていたら、部下もマニュアルを見ます。
上司が報連相をまめにしていたら、部下も真似します。

言葉と行動の一貫性があることで、自然と信頼が育ちます。


7. 信頼関係をつくる仕組み

どんなに素晴らしい仕組みがあっても、関係性が薄いと部下は動けません。

そのためには、日常の小さな関わりがポイントです。
「おはよう」「最近どう?」そんな声かけが、部下の心を開きます。


導くリーダーシップ × 守るマネジメント

ここまでご紹介してきた「7つの仕組み」は、単なるマニュアル整備の話ではなく、上司自身の関わり方のアップデートにもつながっています。

実は、私自身も以前は「引っ張るリーダーシップ」と「従わせるマネジメント」を無意識に行っていました。しかし、時代が変わり、部下の価値観も働き方も多様化している今、それだけではチームが動かなくなってきていることを皆さん感じていますよね。

だからこそ、私が意識しているのはこの2つをプラスすることです。
それは「導くリーダーシップ」と「守るマネジメント」という考え方です。

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、今までの関わり方に少し視点の変化を加えるだけなのです。

「部下が動かない」と悩む多くの管理職の方にこそ、知っていただきたい視点です。それぞれの違いを見てみると、部下が動かない原因が「スキル」ではなく「仕組み」や「関係性」にあることが見えてきます。

種類引っ張るリーダーシップ+ 導くリーダーシップ
目的部下を動かす部下が動けるように導く
関わり方指示・命令対話・共感・任せる
行動例:進め方を決めて、役割を割り振る例:目的やゴールを伝えたうえで、方法は部下に考えてもらう
主体上司が主導部下が主役、上司は伴走
評価軸指示通り動いたか自ら考えて動いたか
種類従わせるマネジメント+ 守るマネジメント
目的数字・ルールを守らせるチームや信頼を守る
関わり方管理・監視状態を整える・支える
行動例:遅刻やミスをチェックし注意する例:仕事・体調・精神的な状態を観察し、必要に応じて声をかける
主体上司が主導上司が守る側
評価軸ミスがないこと状態を保てているか

どちらも「今の上司」として必要な要素、ということがわかるかと思います。
部下を引っ張って、従わせることはチームとして重要ですが、プラスの要素を加えてバージョンアップも必要なのです。


最後に:部下が動ける環境をつくるのは上司の仕事

いかがでしたでしょうか。部下が思うとおりに動いてくれないとき、イライラしたり、がっかりしたり。その気持ちはよくわかります。自分が動いた方が早い、こう思うこともありますよね。

しかし、いつまでも多くの仕事を抱えたままでは、あなたはいつまでも現場の忙しさから抜け出せません。同時に管理職として、役割を果たせないのではないでしょうか。

「部下が動かない」と感じたら、まずはこちらを問いかけてみてください。

  • この仕事の目的を伝えたかな?
  • 手順はわかるようになっていたかな?
  • 報告の導線は整っているかな?
  • 挑戦しても大丈夫な空気があるかな?

そして、自分にもこう問いかけてみましょう。

  • 自分ができていることを、無意識に部下にも求めていないか?
  • 感覚でやってきたことを、仕組みに落とし込めているか?

仕組みは、部下のためだけではなく、上司自身をラクにする「土台」でもあります。
あなたの部下が「考えて動けるようになる」のは、仕組みと信頼の先にある。

仕組みを整えることは、チーム全体の未来を整えることです。
今日からひとつでも、取り入れてみてくださいね。


本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)