こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

最近よくいただくご相談に、こんなものがあります。
「私は課長職ですが、部下がいません。何のための管理職なのかわかりません」
「評価はされたいけれど、マネジメントする相手がいないんです」

『部下なし管理職』という立場の方、意外に多いもの。
部下をお持ちの管理職同様、【専門性と影響力をもって成果に貢献する立場】として、極めて重要なポジションです。

今回は、部下を持たない管理職が増えた背景を見ながら、部下なし管理職・専門職の方が評価されるために必要な「5つの実践」を、自己承認力の視点も含めて具体的にお伝えします。


部下なし管理職が増えた背景3つ

まずお伝えしたいのは、「部下がいない管理職」が増えているのは、あなた個人の問題ではなく、時代の流れそのものだということです。
この背景には、3つの大きな変化があります。

組織のスリム化とフラット化の加速

現在、多くの企業が「変化にすばやく対応できる組織」を目指しています。
その結果、従来のように階層が多く、部下を何人も抱える“ピラミッド型”から、プロジェクト単位で動く“フラット型”の組織構造へと再編が進んでいるのです。

あなたが日々関わっているのも、部署の垣根を超えて集まった「社内外のメンバー」が多いのではないでしょうか?このようなチームでは、必ずしも「部下」という形ではなく、「一緒にゴールを目指すパートナー」という関係性になります。
だからこそ今、管理職に求められているのは、人数を束ねる力ではなく、場を動かす影響力なのです。
何人の部下を持っているかではなく、自分の役割をどう果たしているかが、リーダーシップの本質として問われる時代になってきています。

専門性とプロジェクト推進力が重視されている

もうひとつの背景は、専門性を活かす働き方の広がりです。
いま企業が求めているのは、「人を管理できる人」だけではなく、「専門知識や判断力をもって、物事を前に進められる人」。
たとえば、他部署と連携したり、社外の関係者と調整をしながら、プロジェクト全体を動かしていく。
そんな働き方をされている方も多いのではないでしょうか。
今や、“何人を育てているか”ではなく、“どれだけの影響を与えているか”がリーダーとしての力とされているのです。

キャリア支援と連動した制度改革の進行

そして3つ目は、企業側の制度が変わってきていること。
特に中堅~大企業では、「部下がいなくても役職がつく仕組み」が整いつつあります。

たとえば、長年専門職として成果を出してきた方に対して、「エキスパート職」としてマネージャーやリーダーの肩書きが与えられるケースもあります。
これは、モチベーション維持や処遇の公平性を保つための企業側の工夫でもあります。

つまり、これからの管理職は、「部下を育てる人」だけではなく、
信頼を得て、周囲に良い影響を与える人として位置づけられているのです。

部下なし管理職・専門職が評価される5つの実践

ここからは、なかなか評価されにくいとされる部下なし管理職・専門職の方が評価される5つの実践をご紹介いたします。どんな役職の方にも役に立つポイントですので、現在のご自身と照らし合わせて確認をしてみてください。

1.“部署の壁”をつなぐ人が、影響力をもつ

部下を持たない管理職にとって、自部署だけでなく他部署との橋渡し役になることは極めて重要です。
たとえば、開発と営業、経理と現場など、立場や意見が対立しやすい部門の間に立ち、話を整理したり、目的をすり合わせたりすることで、摩擦が減り、仕事が円滑に進みます。

専門知識を持っているからこそ、それぞれの立場の言語を“翻訳”できるのが、部下なし管理職の強みです。

評価されるポイント:

  • 会議で「全体を見て調整する」立場を担っているか
  • 他部署との関係構築に積極的か

一人で完結する業務が多くても、組織は大きなチームです。「聴く力」「伝える力」は欠かせないのです。


2.“相談される人”が、一番強い

「部下はいないけれど、いつも相談される」「あの人に聞けば安心」 そう思われる存在であることは、無形の価値として高く評価されます。あなたは周りの方から「支持」されているでしょうか。

専門職であっても、「この人に聞けば安心」と思われるような存在は、チーム全体をつなぐ潤滑油のような役割を果たしています。結果として、まわりの仕事もスムーズに進みやすくなるのです。。

このとき必要なのが、自分で自分を整える力=自己承認力です。自分に自信がないと、「私に聞かれても困る…」「責任が増えそうで嫌だな…」と感じてしまうことがありますよね。
心に余裕があり、自信がある方ほど、「ここまでなら答えられる」「これ以上は一緒に考えよう」と、相手と健全な距離感で向き合えるのです。

評価されるポイント:

  • 社内で誰からも一目置かれているか
  • 一人で抱え込まず、必要な場面で協働できているか

3.「発信しない専門家」は、埋もれる

部下なし管理職にとって重要なのが、自ら発信する姿勢です。役職がついているということは、情報の流れの上流にもアクセスできるということ。現場の声、数字の動き、業務の課題などをいち早く捉え、提案ベースで上司や経営層に届けることが求められます。

専門的な視点をもって、ただ指示を待つのではなく、「こうしたらもっと良くなるのでは」と考える姿勢があるかどうかが、評価に大きく影響します。

評価されるポイント:

  • 改善案を具体的に伝えているか
  • 会議や報告で「Yes/No」だけでなく選択肢を提示できているか

4.“伝えること”は、最高の自己成長

「部下がいない」とはいえ、若手や後輩、同僚に対して教えたり、知見を共有したりする機会はあるはずです。このとき、「自分がやった方が早い」と目をつぶるのではなく、「自分の経験を次に渡す」姿勢が大事になります。
他者に「伝える」「アウトプット」の量を増やし、質を高めていくことは、自分自身の思考の整理にもつながり、仕事の質も上がります。

評価されるポイント:

  • 他者に伝える機会を積極的に持っているか
  • 成果の見えにくい人材育成にも意味を感じられているか

5.成果は“見せてこそ”評価される

専門職の方ほど、「自分の貢献なんて、たいしたことでは…」と過小評価しがちです。
そして部下がいない場合、「チームとしての数字」で評価されにくいため、自ら成果を可視化することが重要です。

数字に表れない努力や改善も、「社内マニュアルを整備した」「若手定着率がアップした」「ミス率が◯%減った」など、伝え方を工夫すればしっかり評価対象になります。「自分がやってきたことには意味がある」そう信じて、発信していきましょう。

評価されるポイント:

  • 自分の仕事の成果を簡潔に言語化できているか
  • 上司や他部署に報告・共有する意識があるか

私は企業の「教育担当」でしたので、非常に成果が見えにくい部署にいました。「人が育った」という成果は、測りにくいものですし、大抵は本人が評価されて終了です。
だからこそ、自分で自分の成果を認める「自己承認」が必要、そして周りが評価しやすく「見える化」することも重要でした。発信の量を増やす、マニュアルを整える、動画をつくる、スケジュール共有…これらの見える化は、後進を育てる資産にもなります。その他、求人広告に載る、メディア対応、社外で講演をする、など対外的な動きも行った結果、教育担当の重要性を社内の方にも理解いただけたと感じます。

+α:未来に渡せる仕事は、あなたの“資産”

最後に、あなたにとっても組織にとっても重要なことをご紹介します。
それは、あなたが取り組んできた仕事を“未来に渡せる形”にしておくことです。

あなたが当たり前に行ってきた業務の手順やポイント、工夫したことをまとめておく。
これは「引き継ぎ」だけでなく、将来部下を持ったときの“育成マニュアル”にもなります。

自分のやってきたことを、未来の誰かが使えるようにする。
5つ目の「見える化」にもつながりますが、あなたの努力や成果を形に残すことは、“組織の資産”になるということ。それを実践できる人こそ、間違いなく評価される管理職です。

まとめ:管理職の形はさまざま

いかがでしたでしょうか。
「評価されにくい」「何をすればいいかわからない」
そうお感じになることもあるかもしれません。

しかし、あなたの立場は、組織の中で確かに必要とされています。
管理職とは、肩書でも部下の人数でもなく、“視点と姿勢”で力が発揮され、評価されるものです。
自分の専門性で周囲を支え、影響力を発揮し、誰かの役に立つ仕事をしているなら、それは立派なリーダーシップ。

先日、とある企業の管理職研修で、ある参加者の方がこんなことをおっしゃいました。
「俺は部下がいないから、部下育成なんて関係ないですよ」

私はその言葉に対して、まずこう返しました。
「大変正直な思いですね、ありがとうございます」
「今は確かに部下はいないかもしれません。しかし、将来の異動でどなたかに業務を引き継ぐときや、新しいメンバーが加わったとき、今日の学びが必ず役に立ちます。そして、今回ご参加くださっているということは、現在管理職のあなたに“知っておいてほしい”という会社からのメッセージも含まれているのです」

その方は、少し驚いたような顔をして、最後にはしっかりメモを取りながら参加してくださいました。

こうした対話の中で、私はあらためて実感しました。
「今の自分には関係ない」と思っていることこそ、未来の自分を支える土台になると。

だからこそ、自分の経験をまとめておく、自分の仕事を資産化しておく、という視点はとても大切です。
それは、将来の誰かのためでもあり、あなた自身のためでもあるからです。

自己承認力を高め、自分の立ち位置に誇りを持って進みましょう。
あなたの実践が、必ず組織の未来につながります。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)