こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「部下がなかなか育たない」
「結局、自分がやらないと終わらない」

多くの上司の方から、こんな声を聞くことがあります。

実は、「部下が育たない」と悩んでいる方ほど、“部下を信頼して任せていない”ことが多いのです。

「自分でやったほうが早い」
「失敗されたら責任を取るのは自分」

そんな気持ちのままでは、どんなに時間をかけてもチームは成長しません。
任せると言うのは、単に仕事から手を放すことではありません。

今回は、部下育成の本質でもある「任せるリーダーシップ」を詳しく解説しながら、
信頼で人を育てる3つの法則をお伝えします。


任せるリーダーシップとは?

「任せるリーダーシップ」とは、信頼をもって役割を託し、相手の成長機会をつくることです。

仕事を分担すればいいのではなく、「相手の力を信じて、経験を積んでもらう」という意図をもって仕事を渡しましょう。

つまり、“業務を任せることそのものが育成”につながるのです。

時と場合によって使い分けが必要ですが、指示型のリーダーシップは、「上司が決め、部下が動く」スタイル。任せるリーダーシップは、「上司が環境を整え、部下が考えて動く」スタイルです。

あなたもご経験があるのではないでしょうか。上司から仕事を任せられると、部下は「考える力・判断力・責任感」が身につき、やがて自走できるようになります。
部下が成長するうえで、上司が上手に仕事を任せることは不可欠なのです。

仕事を任せられたそれぞれのメンバーが自分の役割を理解し、助け合いながら進む。そんな「強いチーム」が育つ環境をつくることもリーダーの仕事です。


第1の法則:任せる前に「自分の仕事を整理する」

最初に大事なことをお伝えします。
「自分の仕事が整理できていなければ、人には任せられない」ということです。

あなたは今、自分の業務がどれだけあって、それぞれどんな進捗具合かを把握していますか。
それぞれの業務のゴールと計画が見えていますか。

多くの上司が、「忙しいから仕事を任せたい」と思いながらも、実際には自分の業務の全体像を把握できていません。抱えているタスクが曖昧なままでは、「どの仕事を、誰に、どんな目的で任せるか」が不明確になります。

結果として、「これやっておいて」という、“丸投げ”や“指示漏れ”が起こり、部下が混乱してしまうのです。この中途半端な仕事のふり方で、人が育つはずがありませんよね。

部下に仕事を任せる準備段階として、「今現在抱えている自分の仕事」を紙に書き出してみましょう。
この方法は、研修でもよくお伝えする方法です。すべてを書き出すのに何時間もかかる管理職の方もいます。

「通常業務」「プロジェクト」「突発対応」など、思いつく限りすべて出します。
そして、次の3項目で整理します。

◆やること(TODO)
◆期限(タスク化)
◆担当(自分/任せる)

まずは、TODOを書き出して、そのあとにTODOの期限を書き出し、担当者を記入する。
可視化することで、「自分が担うべき仕事」と「他者に任せられる仕事」が一目でわかります。

頭の中のモヤモヤを整理して、心の余白とタスクの余白をつくることで、初めて“人に任せる余裕”が生まれます。


第2の法則:「任せる」ときに立ちはだかる2つの壁を知る

“他者に仕事を任せられない”ときに確認したいのは、2つのうちのどちらの壁があるかです。
その2つの壁とは、「心理的な壁」と「スキルの壁」です。

1. 心理的な壁(心のブレーキ)

例えば、
「部下も忙しいのに、業務を任せて嫌な顔するだろうか」
「部下は経験ないし、自分でやった方が確実だ」
「もし部下がミスしたら責任を取るのは自分」

これらは誰にでも思い浮かぶ自然な不安です。
しかし、ここで少し立ち止まって考えてみてください。

本当に怖いのは、今のままずっと部下が育たずに、自分の仕事ばかりが増えていくことではないでしょうか。

あなたが仕事を任せたときに、相手の方は
・「忙しいから嫌です」と言いますか?
・「経験ないから、やりたくないです」と言いますか?
・「ミスをする」のは確実ですか?

恐らくほとんどの場合、これらの答えはNOですよね。

  • 「真摯に伝えれば、きっと引き受けてくれるだろう」
  • 「任せても大丈夫、何かあってもフォローできる」
  • 「完璧じゃなくても、成長の機会になるはずだ」

こんな風に「相手を信じ、自分を信じること」を意識すると、心の壁は簡単に乗り越えられるのです。


2. スキルの壁(やり方の問題)

次に大きいのが、「どう任せたらいいかわからない」というスキルの壁です。
多くの上司は、部下に仕事を“渡す”ことには慣れていても、“任せる”ことには不慣れです。

ここで大切なのが、具体的な「任せ方の3ステップ」です。

Step1. 目的とゴールを共有する
仕事の「何を」「なぜ」「どこまで」を明確にします。
「来週の会議資料を作って」ではなく、
「来週の会議で意思決定できるように、要点をまとめた資料を作って」と伝えるだけで、
相手の理解度と動きが変わります。

Step2. 分担と進め方を決める
「誰が・何を・どの順で・どんな基準で進めるか」を一緒に決めましょう。
曖昧な指示ほどミスが増えます。
部下が安心して動けるように、具体的に“成功の基準”を共有することがポイントです。

Step3. 相談と進捗確認のタイミングを決める
「任せた=放置」ではありません。
任せるとは、信じながらも見守ること。
たとえば、「毎週金曜の夕方に5分だけ進捗を教えて」と決めておけば、お互いの安心感が生まれます。

この3ステップは、単なるテクニックではなく、信頼関係を可視化するプロセスです。
お互いが「期待」と「責任」を共有できるからこそ、仕事がスムーズに進みます。


第3の法則:「任せる」はチームを強くする最高の教育法

上司が抱え込みすぎるチームは、一見スピーディーに見えて、実はとても脆いものです。
誰かが欠けた瞬間、仕事が止まる…それは、“人を育てずに回してきたツケ”なのです。

任せるリーダーシップを実践しているチームでは、一人ひとりが自分の役割を理解し、自ら考えて動きます。「上司が見ていなくても回る」状態が、お互いの信頼の証です。

仕事を任せるのとセットで大事なのが、「承認のフィードバック」です。
結果だけでなく、プロセスを必ず確認して相手の仕事を認めること。

  • 「自分で考えて動いていたね」
  • 「前回よりもスピードが上がってきたね」
  • 「やり方を工夫してくれたのが助かったよ」

このような声がけが、部下のやる気を何倍にも引き上げます。
進捗確認は、部下の業務の遅れやミスを事前に防ぐことにも役立ち、チーム全体の管理につながるので欠かせない作業です。


まとめ:「任せる」とは、相手を通して自分を育てること

いかがでしたでしょうか。任せるリーダーシップとは、部下を信頼することであり、同時に自分自身を育てることにもつながります。

  • 自分の仕事を整理して、整える。
  • 心理的な壁とスキルの壁を越えて、具体的に任せる。
  • 信頼と承認で、チーム全体を強くする。

この3つを意識していくと、上司も部下も変わっていきます。

完璧な任せ方を目指す必要はありません。
今日できる小さな一歩、「この仕事、お願いできる?」と伝えるところから始めてみましょう。

任せる勇気が、チームを強くし、あなた自身のリーダーシップを磨いていきます。


本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)