こんにちは!
自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
管理職の方向けにハラスメント対策研修を行っていると、
よくこんなお声を耳にします。
「どこまでが人材育成で、どこからがパワハラなのか」
「熱心に指導したところで、ハラスメントと言われないか不安」
人材育成に本気で向き合っている管理職ほど、
「厳しさ」と「配慮」の境界線で迷われます。
ハラスメントについて“やってはいけないことだけ”を学ぶ。
これでは、「もう何も言えない」「指導できない」
そう感じてしまうのも無理はありません。
そこで今回は、人材育成とパワハラの境界線に触れながら
「じゃあ、どう指導すればいいのか」という一番大事な部分。
ここまで掘り下げて、具体的な指導方法を一緒にみていきましょう。

人材育成とパワハラで迷わない指導法5つ
管理職が人材育成とパワハラの境界線で迷わないように、
押さえておきたい指導のポイントは次の5つです。
ここから、一つずつ丁寧に解説していきます。
1.人材育成の指導は「業務」に限定する
まず大前提として、
指導で扱うのは「業務に関すること」だけです。
パワハラに近い指導の多くは、
無意識のうちに「人」や「人格」に踏み込んでいます。
例えば、
・やる気が感じられない
・社会人としてどうなのか
・その性格が問題だ
これらはすべて上司の個人的な感覚からくる人格評価です。
これは指導とは言えません。
指導は、事実・行動・業務に基づいた指摘とアドバイスを伝えます。
例えば、
・業務の締切が守られていない+~してほしい、~すると良い
・報告がなく遅れている+~してほしい、~すると良い
・この作業は〇時までに共有が必要+~してほしい、~すると良い
このような表現です。
人ではなく、仕事を見る。
この線引きは、部下を守るだけでなく、
管理職自身を守る境界線でもあります。
2.感情が動いているときは、その場で指導しない
余裕がないとき、イラっとしたとき、焦っているとき。
この状態で出る言葉は、高確率で危険です。
管理職の方がやりがちなのが、
「今言わなければならない気がする」
「この場で強く分からせたい」という判断です。
しかし、感情が乗った言葉は、
内容よりも「圧や威圧感」として残ります。
上司自身の感情が荒れている状態は、どうしても吐き出したくなります。
そして、その対象となるのが身近にいる部下になりやすいのです。
これは、私もよく使う方法なのですが
感情がぐわっと盛り上がって、つい何かを言いたくなったら
一旦、深呼吸して「感情を落ち着ける」
言葉にするのは、感情が落ち着いて冷静になってからです。
冷静に、相手が理解できるように考えた言葉は、
怒りの感情のまま伝えるよりも、ずっと相手に伝わりやすくなります。
この少しの工夫が、人材育成とパワハラの境界線を守ります。
3.「なぜできない?」は使わない
「なぜ?」は便利な言葉ですが、
指導の場では最も誤解されやすい質問です。
部下の頭の中では、
「責められている」
「否定されている」
「追い詰められている」
と変換されやすく、結果として言い訳や沈黙が増えます。
部下の思考を開かせるために、と
・なぜこうしたの?
・なぜそう考えたの?
・なぜこうなったと思う?
「なぜなぜ攻撃」をなさる管理職がたまにいますが…
上司がこれをすると思考が止まる方が多いです。
私自身もこの攻撃をされたことがありますが、
地獄だと思いましたので、おすすめしません。
指導でつかうのは、未来に向けた問いです。
思考を開いてほしいのでしたら
・次はどうすればできそう?
・どこを変えれば進めそう?
・私がサポートできる点はある?
「じゃあ、どうするの?」という
相手の行動を引き出すための質問をすることが有効です。

4.一度に伝えるのは「一つだけ」
管理職ほど、「あれもこれも伝えなければ」と思いがちです。
気がついたときに、目についたことを全部言いたい気持ちはよくわかります。
しかし、指摘を一度にたくさん受けると
部下は「自分はダメだ」と感じやすくなります。
人は、自己否定が強まった瞬間に、
行動エネルギーを失います。
・今回、何を一つ変えてほしいのか
・最も重要なポイントは何か
これを一つに絞る。一時に一事です。
そして、改善したこと・成長したことを確認してから、次のステップへ進みます。
結果的に、この方が人材育成のスピードは上がります。
5.指導の目的を上司自身が確認し続ける
最後が、最も重要なポイントです。
指導がブレる管理職の多くは、
「この指導でどうなってほしいのか」が曖昧なまま話しています。
成果を出してほしいのか。
仕事のやり方を修正したいのか。
次は一人で任せられる状態にしたいのか。
ここが整理されないまま
「とにかくやってほしい」「分かってほしい」
という気持ちだけで伝えると、
言葉は自然と「正しさ」や「圧」に寄っていきます。
指導の前に、上司自身が確認したいのは次の一点です。
「この指導が終わったあと、相手にどんな行動を取ってほしいのか」
・報告のタイミングを変えてほしい
・やり方を一つ修正してほしい
・次はここまで任せられる状態になってほしい
このレベルまで具体化できていれば、
指導は感情論になりにくくなります。
なぜ人材育成がパワハラに変わってしまうのか
ここまで5つの指導法をお伝えしましたが、
パワハラの多くは、行為者側の思い違いから起こります。
・コミュニケーションのつもりだった
・関係性は築けていると思っていた
・指導しているつもりだった
この思い違いが、関係性をいびつなものにしてしまうのです。
上司の指導やコミュニケーションの目的が
「自分の感情を伝えたい」「わかってほしい」に寄ると、
境界線を越えやすくなるので注意したいものです。
私自身の失敗談|人材育成がパワハラだった頃
ここで少し、私自身の話をさせてください。
20代の頃、飲食店で役職をいただき、責任者を任されました。
「自分が引っ張らなければ」
「自分が上に立っている」
プレッシャーと共に、そんな間違った認識を持っていました。
休みもなく、心に余裕もなく働いていたこともあり、
ひどいときにはアルバイトさんに
「やる気ないなら、辞めてもいいですよ」
という言葉を口にすることもありました。完全にパワハラです。
この時期の反省をずっと抱えながら、現在企業様でハラスメント対策の研修を担当しています。
感情で発した言葉は、相手も自分も傷つく結果を生みます。
そこに早めに気がついて、対策をしたいものです。
管理職は存在そのものが「威圧感」になる

これも押さえておきたい重要なポイントです。
役職があるだけで、言葉や態度には
すでに威圧感が上乗せされている。
同僚から言われる一言と、
上司から言われる一言。
同じ言葉でも、受け取られ方は全く違います。
黙って立っているだけでも、自分には圧があると考えておくと良いです。
「圧=影響力、存在感」とも言えます。
影響力や存在感は、チームを盛り上げたり、
褒め言葉を伝える際に活用していきたいですね。
人材育成とパワハラで悩める管理職へ
いかがでしたでしょうか。
「これってパワハラかな?」と立ち止まって考えている時点で、
あなたは真剣に人材育成に取り組んでいるという証拠です。
人材育成とパワハラの境界線は
相手の未来を見ているか、
自分の感情を見ているかの違いにあります。
相手のことを考えながら、人材育成を進めている時点で
パワハラの要素は薄いと考えていいのかもしれません。
しかし、念には念を。
感情を整理する方法と、言葉を選ぶ工夫の仕方は、
人間関係を築くうえで欠かせないスキルとなります。
コミュニケーションに苦手意識がある方は、
今のうちにトレーニングをしておくといいかもしれないですね。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)