いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
部下との関係でお悩みの方からよくご相談をいただくのですが、一番はじめに投げかける質問があります。これをお伺いして情報収集しないことには始まらない、という質問です。
一体なんだと思われますか。
それは・・・
「“これまでの部下との会話量”はいかがですか?」です。
家族で想像するとわかりやすいかと思います。
・毎日会話をしてきた家族
・ほとんど会話がなかった家族
もめ事があったとしても、関係を修復しやすいのは圧倒的に前者ですよね。仕事のチームも同じで、近くにいるのに日頃コミュニケーションがとれていない、というのはかなり厄介なのです。
私自身、元々人と関わるのが苦手です。人見知りで、無口で、仲がいい人が2~3人いればいい。人間関係は狭い方が好きなタイプです。気が合わない人とは、会わなければいいと考えていました。
しかし、お仕事はそうはいきません。対面でもネット上でも、人との付き合い方が重要になってきます。「コミュニケーション苦手なんですよね」で済ましてしまうと、誤解されたり、評価が下がったり、後で自分がイタイ目を見ます。(経験あり)
才能や性格は関係なく、コミュニケーション能力はスキル。私もトレーニングを重ねて改善出来ましたし、いくらでも鍛えることが出来ます。
今回は、「部下と話さない上司」について一緒に考えていきながら、今現在「上司との関係で悩んでいる」そして「部下との関係で悩んでいる」方へのヒントとなる内容になればいいなと思います。
それでは、みていきましょう!
なぜ部下に話しかけない上司がいるのか?
ではまず最初に「部下に話しかけない上司」になる理由は何なのでしょうか。一緒に考えてみましょう。
1. 忙しさに追われ、コミュニケーションが後に回る
多くの管理職はプレイングマネージャーです。日々の業務や会議などに追われ、部下と話す余裕がないと感じている方もいらっしゃるかもしれません。 成果に直結する実務とは異なり、チームづくりや部下育成の取り組みに関する行動は結果が目に見えにくいため、後回しにする上司は多いです。先々を見据えて、「緊急性はないが、重要なもの」にどれだけ早く取り組めるかがポイントです。
2. コミュニケーションが苦手(何を話していいかわからない)
世代のギャップ、価値観のギャップにより、部下と会話をする際に「どんな話題を選べばいいのかわからない」と距離を置いてしまう上司もいます。 ご経験がある方も多いと思いますが、相手と距離を置くことで、さらに距離が生まれて「より話しかけにくくなる」という悪循環が生まれます。
3. 会話・コミュニケーションの必要性を理解していない
そもそも「職場で余計な会話は必要ない」と考えている方です。プライベートな話をしろと言っているわけではありません。仕事に関して「今、どんな目標を持って何に取り組んでいるのか?進捗はどうか?」「困ったことはないか?」こういった情報がスムーズに入ってくる環境をつくるためです。余計な会話をしない上司に対して、部下は気軽に相談しにくいですし、必要かどうか判断しかねる情報は共有しなくなるものです。
部下に話しかけない上司の5つのデメリット
ここからご紹介するのは、部下とコミュニケーションをとらないことによって起こりうるデメリットです。「部下との会話がなくても業務は成り立つ」今現在、そのようにお考えの方もいらっしゃると思います。ここで一度、今後起こりうるデメリットの要素の確認をしていきましょう。
1. 部下から情報が入らない
上司のコミュニケーションが必要最低限の場合、当然ながら部下からの情報は入ってこなくなります。そのため、「問題が大きくなってから発覚する」というケースも少なくありません。後になって「早めに報告してくれれば…」と思ったところで時すでに遅し。「情報は宝」とよく言いますが、その宝を運んでくれるのは人なのです。
2. チームワークの低下
コミュニケーションは職場の空気を作る大切な要素です。会話が極端に少ないチームは、全体が冷たい雰囲気に包まれることがあります。会話で生まれる信頼関係を築きにくいため、気軽に相談をしたり、お互いにアドバイスをすることが難しくなります。個人作業が多いと誤解から発生する問題も起こりやすいです。例えば同じチーム内で、「自分はこんなに頑張っているのに、あの人は仕事をしていない」など、情報不足による偏った不満が出ることもあります。
3. 部下のミスが増える
上司からの報連相や進捗確認・フィードバックが少ない部下は、自分で判断して動くことが増えます。そのため、どうしてもミスが起こりやすくなるものです。普段コミュニケーションをとらない上司が、たまに面談をしたかと思うと「部下のミスへのダメ出し」だけ、というパターンもよくあります。
4.チームのモチベーションが下がる
3番目の「部下のミスが増える」にも関連しますが、上司からのコミュニケーションが少ない部下はストレスが溜まりやすいです。集中力が低下し、注意を受ける場面が多くなります。一方で、仕事で結果を出しても大して褒められない。仕事へのモチベーションが下がるのは当然です。個人プレー中心では新たな発想も生まれにくく、成長しにくくなるもの困りものです。
5.離職率が高まる
1~4までお読みくださった方は、もう想像がつくかと思います。部下に話しかけない上司が率いるチームは、離職率が高まります。一番近くにいる未来の自分のお手本が上司です。その上司とのコミュニケーションが希薄な状態では、自身のキャリアプランが見えにくく「このままでいいのだろうか?」と不安を抱きます。他の企業の方が良く見えてしまうのも仕方がありません。
体験談:上司とのミスコミュニケーション
私が過去に経験した「上司部下のコミュニケーション不足」をご紹介します。私は20代前半の頃に、男性上司に遠慮しすぎて、あまり会話が出来ずに悩んだことがありました。きっと上司もコミュニケーションが苦手な私に少し困っていたのでは・・・と思います。仲が悪かったわけではないのですが、気軽に会話が出来る関係でもないという状況でした。
そんなある日、上司が放った一言を私が大きくねじ曲げて受け取ってしまったことがありました。今考えると何気ない言葉だったのですが、自分を全否定されたように感じたのです。
当時の私の自信のなさと被害妄想、それまでに溜まっていたストレスが爆発!恥ずかしながら職場で号泣してしまいました。突然泣いて仕事にならない私に、上司は慌てることなく「少し話そう」と言って2人でゆっくり話す時間を設けてくれました。そのときにお互いに本音を話したことで、私の偏った誤解も解けて、上司は私の仕事を評価してくれていたことを初めて知りました。「忙しくてあまり話せてなかったよなぁ」と、上司が謝ってくれたのが印象に残っています。
それ以来、その方とは何かあるごとに相談をし合ってチーム作りをしていき、強い信頼関係を築くことが出来ました。今でも尊敬しているビジネスパーソンです。もし、あのまま上司と話す機会をもらえなかったら・・・仕事を辞めていただろうなと思います。
部下に話しかけない上司を脱却!3つの改善ポイント
ここからは、改善ポイントを一緒にみていきましょう。今回は、簡単に始められる3つの行動を挙げてみました。
1.挨拶プラスの会話から始める
まずはじめに「おはよう」「お疲れ様」といった日常の挨拶が徹底出来ているかを確認します。その挨拶は笑顔で明るく、アイコンタクトは出来ているでしょうか。挨拶は、相手に安心感を与えます。出来そうでしたら、プラスの言葉もつけ加えてみましょう。
●「おはようございます!〇〇さん、今日もよろしくお願いします」
●「〇〇さん、お疲れ様!今日もありがとう!」
こんな感じで挨拶に一言付け加えるだけで、相手にぐっと気持ちが伝わります。
2.相手を認める言葉(承認の言葉)を意識して伝える
部下のありのままの現状を認める言葉を伝えてみましょう。部下の方が取り組んでいることをそのまま伝える手法です。無理に褒める必要はないので、取り組みやすいと思います。
●「〇〇さん、今月も資料の提出ばっちり締切守ってたね」
●「〇〇さん、▢▢の掃除やってくれてたでしょう」
●「〇〇さん、報告メール送ってくれたんだね」
このような言葉を伝えることで、部下の方は「上司は自分の仕事を見てくれている」という気持ちが生まれます。もし伝えられそうでしたら、加えて「ありがとう」「助かるよ」などの感謝の表現も伝えてみましょう。
3. 1対1で話す時間を定期的に設ける
週に1度のペースで、10分ほどお話しする時間を設けてみてください。昼の休憩に入る前の10分間でいいのです。お茶やジュースを飲みながら、今のお仕事の状況や今日の予定を聞いてみましょう。最近ハマっていることを尋ねてみるのもいいかもしれません。面談ほど堅苦しくない内容で、さらっと情報交換をする感覚で会話をしてみましょう。
●「最近の仕事の進み具合どう?」
●「今日の仕事の予定はどんな感じ?」
●「取引先の△△さんとの仕事はどう?」
上司が積極的にアドバイスをするとお説教のようになってしまうこともありますので、まずは状況把握を目的として、お互いに近況を報告してみることをおすすめします。
部下と話さない上司にメリット無し!勇気を出して一歩踏み出そう
いかがでしたでしょうか。「部下に話しかけない上司」というテーマで、デメリットと改善策を考えてみました。それぞれ仕事のスタイルがありますから、部下とは余計なコミュニケーションをとらない、という選択をするのも自由です。しかし、あらためて考えてみるとメリットはさほど無く、デメリットばかりだと感じます。逆に言えば、コミュニケーションを改善することで得られるメリットは大きいということです。
もしも、部下にあまり話しかけていない理由が「忙しい・何を話したらいいかわからない・何となく」ならば、今回3つご紹介した改善策を試していただく価値があるのではないでしょうか。ベラベラと長話をしろと言っているわけではありません。些細なことを気軽に話せる関係を築けていることが大事です。
ひとつずつ、一緒に挑戦していきましょう!
本日もあなたを応援しております!
では、また次のコラムで(^^)/