こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
「この部下、何度教えても仕事ができない…」
「指示しても動かないし、努力する気が見えない」
「もう何を言っても無駄かもしれない…見捨てるしかない?」
そんなふうにお感じになったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
もしあなたが「使えない部下を見捨てるべきか?」と悩んでいるのなら・・・
まず最初にお伝えしたいことがあります。
テキトーに部下に関わっている上司は、「見捨てるかどうか」なんて悩みません。この部下は能力がないと早々に諦めて放置、なんてこともあります。
「部下の成長を諦めるべきなのか?」と悩む時点で、どれだけあなたが真剣に部下に向き合ってきたかがわかります。
そんな風に必死に部下育成に取り組んでいる上司として、ここで一度立ち止まって考えてみませんか?
「そもそも“使えない部下”という発想は正しいのか?」
管理職の方とお話をすると「使える・使えない」という話がたまに出てきます。実は、この目線で相手を見てしまうと、本来持っている可能性や良さを見逃してしまうことがあります。
部下は使うものではありません。道具ではなく、人です。あなたの弟子でも、召使でもないのです。
もしも、今あなたが
「この部下は見込みがない」
「仕事ができない人間はどうしようもない」
「育てる価値がない」
と感じているとしたら、その価値観を少しだけ見直してみませんか。
「使える・使えない」ではなく、「どのように力を発揮できるか」を考えることが、管理職の本当の役割だからです。
今回は、上司として考えるべき5つのことをお伝えします。

1. 相手の能力を決めつけていないか?
まず、「この部下は使えない」と決めつけていないか、自分自身の思考を振り返ってみましょう。
◆本当に「能力がない」のか?それとも「自分の期待とズレているだけ」なのか?
◆ あなた自身の「感情」や「価値観」が影響していないか?
◆ そもそも「何をもって”使えない”と判断しているのか?」
これまでに多くのビジネスパーソンに出会ってきましたが、その人の能力が開花するかどうかは「上司次第」といっても過言ではないと感じています。転勤や異動で上司が変わったことで、職場で大活躍し始める方もたくさんいるのです。
部下の能力に疑問を感じたときには、真っ先に上司である自分自身を確認することをおすすめします。
たとえば、
✔ 「指示通りに動かない」 → 指示が曖昧だからではないですか?
✔ 「ミスを繰り返す」 → 適切なフィードバックが足りないのではないですか?
✔ 「やる気が見えない」 → どう頑張るかを伝えていないのではないですか?
「部下を変えたいなら、自分が変わる」これが一番早いです。
部下育成に悩んでいた当時、私は自己承認力の講座で自分自身の力不足を実感しました。部下が育たないのもチームが結果を出せないのも、一言でいえば、「ぜーんぶ自分のせい」だったのです。当時は頑張っていたつもりでしたから、これを認めるのは正直辛かったです・・・。
そして、よくわかったのは「人が能力を発揮するには環境が重要」ということです。怖い顔をして、数字のことばかり管理して、注意ばかりしていたら、人が育つはずがないのですよね。
2. 「上から目線」ではないか?
上司部下の関係を築いていく中で、邪魔をするのが上司の上から目線です。役職=役割の差です。役職が高い人が偉いわけでも、人として優れているわけでもありません。
しかし、組織の中で役職を重ねていくと知らないうちに「上から目線」になっていることはよくあります。
部下との関わり方を見直すとき、ぜひチェックしてほしいのが 「ご自身が日常的に使っている言葉」 です。
◆ 「人を使って仕事をする」「部下が使えない」
◆ 「あの部下にこの業務をさせる」
◆ 「あのとき俺がフォローしてあげた」
◆ 「せっかく教えてやってるのに」
◆ 「俺の言う通りにすればいいのに」
◆ 「あいつは言うこと聞かない」
こうした表現が無意識のうちに出ているとしたら、もしかすると「部下を対等なチームの一員として見ていない」可能性があります。
言葉は思考と直結しています。「使えない部下」という発想があると、それに紐づく言葉も自然と「上司が優位に立つもの」 になってしまうのです。こういった発想は、自分自身が受けて来た教育が影響することもあります。過去に上司から上から目線の指導をされてきた、そんな方も多いと思います。

では、上から目線の言葉はどんな風に言い換えをすればいいでしょうか?
【言い換え例】
×「あの部下にこの業務をさせる」
〇 「○○さんにこの業務をお願いする/〇〇さんにこの業務を担当してもらう」
× 「あのとき俺がフォローしてあげた」
〇 「あのとき、○○のサポートをした」
× 「せっかく教えてやってるのに」
〇 「できるだけ伝わるように工夫したつもりだけど、伝わっているかな?」
「上下関係」ではなく、「チームの仲間として関わる意識」を持つことで、部下も心を開きやすくなります。
3. 部下の「強み」は活かせているか?
どんな方にも、得意なこと・苦手なことがあります。上司として「部下の強み」を把握して、それを活かせるかが重要です。
・「不得意なこと」ばかり指摘していませんか?
・「その人の強み」を活かせる仕事を任せたことはありますか?
・ 適材適所を考えていますか?
例えば、
✔ 事務作業は苦手だけど、対人コミュニケーションは得意かもしれない
✔ 細かい作業は苦手だけど、アイデアを出すのは得意かもしれない
部下に対して「できないこと」に焦点を当てるのではなく、「できることを伸ばせる関わり方」にシフトしてみると、意外な変化が生まれるかもしれません。
あるあるですが、部下が苦手なことに関して100点満点を求めていませんか。平均的にどれも70点の方もいれば、得意なことは100点で苦手なことは40点の方もいると思うのです。
私は0からクリエイティブな発想をするのは苦手ですが、アイデア1をあれこれ考えて10くらいにするのは得意です。ずっと同じ作業をするのは苦手ですが、効率を考えて工夫をしながら作業をするのは得意です。
この「自分の得意なこと」を仕事で活かせたら、部下の方の能力も高まり、やりがいも出ますよね。
4.「信頼関係」は築けているか?
部下の方が心を開いていない状態でいくら指導をしても、残念ながら、相手には届きません。
あなたがどれだけ正しいことを言っていても、信頼関係が築けていなければ、「また怒られる…」「責められる…」と構えられてしまうのです。
では、信頼関係とは何か?
それは、「この人は、自分を見てくれている」「自分の味方でいてくれる」という安心感です。
たとえば、日頃こんな声かけをしていますか?
- 「今日は表情が明るいね、何かいいことあった?」
- 「この前の件、どうだった?」
- 「ありがとう、助かったよ」
こうした何気ない一言の積み重ねが、信頼関係を作っていきます。
ポイントは、“仕事以外の会話”を含めて、部下と日常的なコミュニケーションがあるかどうか。
私も以前は「忙しいチームには無駄話は必要ない」と思っていました。しかし、何気ない会話の中にこそ、相手の人柄や価値観を知るヒントがたくさんあるのです。
ふとした会話から、部下の「今の状態」を察知できるようになりますし、その情報があってこそ、指導のタイミングや言葉選びも変わってきます。
信頼関係があると、多少厳しいフィードバックをしても、部下は「この人は本気で自分の成長を考えてくれているんだ」と受け止めてくれます。
見捨てるかどうか悩む前に、まずは「部下と信頼関係は築けているか?」を振り返ってみましょう。

5.自分自身を「ねぎらう」習慣はあるか?
部下のことを考えて悩んで、育成に真剣に向き合っているあなた。実は、その時点で「とても頑張っている上司」です。
部下に一生懸命になるあまり、自分自身を責めていませんか?
- 「自分の教え方が悪いのではないか…」
- 「やっぱり自分には育成の才能がないのかも…」
- 「他の上司なら、もっと上手くやれているはず…」
こんな風に、自分を追い詰めてしまう方も多いです。
しかし、上司も“完璧じゃない”のです。うまくやれないことがあって当然なのです。そんな自分自身を認めていきましょう。
当協会がお伝えしている「自己承認力」を高めるには、まずは自分をねぎらうことから。
たとえば、夜ふと一息ついたときに、こんな言葉を自分にかけてみてください。
- 「今日も一日、よくやったよね」
- 「部下のこと、あれだけ考えていたんだから十分頑張ってるよね」
- 「迷いながらでも、向き合ってる自分って偉いよね」
「使えない部下」ではなく、「まだ力を発揮しきれていない部下」だと捉え直すには、上司自身の“心の余裕”が必要です。
そのためにも、まずは自分自身をねぎらう時間を大切にしましょう。
自分を認められる人は、他者も認められるようになります。
それが、結果的に部下育成の力にもつながっていくのです。
自身のストレスケアをして部下を見守ろう!
いかがでしたでしょうか。このコラムを読んでくださっている方は、「もう部下を見放そうか?」とお考えになるくらい、たくさん部下育成に悩んで来られたのだと思います。
そのくらい「部下と本気で向き合ってきた」ということですよね。時間と労力を使って指導したことが相手に伝わらないのは、腹が立つし、呆れるし、悔しくて悲しいです。相手に強く言いたくても、上司という立場上言えないことも多いでしょう。
それでも「使えない部下」なんて、本当はいないと私は考えています。
あなたが今困っている部下は、数ある仕事の中から、今の職場を選んで、採用されて、あなたの部下になっています。「ここで働きたい」という気持ちがあって、スタートしています。才能0の人なんていないと思うのです。
人の行動や態度は、環境が作ります。あなたの関わり方で、部下の可能性が変わることは十分にあります。
でも、それでも無理だと思ったら、ご自身を責めないでください。もう十分に頑張っています。
たしかに対応が難しい方がいるのも事実。相手も心を開かなければ、コミュニケーションはとれません。
自分の限界が来る前に、ぜひあなたの上司や本部に相談をなさってみてください。どうか、ストレスケアをしながらご自身のことも大切にしてくださいね。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)