こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。 いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「部下を指導したら、逆ギレされた…」 そんな経験はありませんか?

上司として部下を注意・指導するのは仕事の一部ですが、 突然部下が怒り出したり、反抗的な態度を取ったりすると、 驚きや戸惑いを感じることもあるでしょう。

しかし、逆ギレへの対応を誤ると

  • 部下との関係が悪化し、指導がしにくくなる
  • 部下の成長が止まり、上司の仕事が増える
  • 上司自身がストレスを抱え込む

といった負のスパイラルに陥る可能性があります。

では、どうすれば「上司自身のメンタルを守りながら、逆ギレ部下を冷静に指導すること」ができるのでしょうか?

今回は「逆ギレする部下の心理」と「上司のメンタルケア」を深掘りしながら、基本対処法を3つご紹介します。加えて応用編もご紹介しますので、ご自身の事例にあわせてアレンジをしていただければと思います。


逆ギレの原因:怒りのメカニズムを知る

そもそも「逆ギレ」とは、部下が注意や指導を受けた際に感情的に反発し、キレてしまうことを指します。

部下が逆ギレする理由

心理学的に見ると、怒りの根底には「本当の感情」があります。 例えば、悲しみ・恐れや不安・罪悪感・無力感・羞恥心などです。表面上ではただキレているように見えても、「頑張っているのにわかってもらえない」「気持ちが全然伝わらない」そんな悲しい思いがあるのです。

怒りの根底にある感情特徴・心理状態具体例
悲しみ自分が愛されていない、認めてもらえないという喪失感「上司は自分の頑張りを見てくれない…」
恐れ・不安未来が見えない、このままでは危ないという恐怖心「またミスをしたらどうしよう…」
罪悪感自分が悪いのではないか、自分には価値がないという自己否定「自分のせいでチームに迷惑をかけたかも…」
無力感何をやっても変わらない、どうしようもないと感じる絶望感「どうせ何をやっても認められない…」
羞恥心恥をかいた、自分が劣っていると感じる劣等感「みんなの前で叱られて恥ずかしかった…」

こういった感情の結果として、部下はストレスを爆発させ「怒り」という形で表に出してしまうのです。

大事なことは「キレた部下の背景にどんな感情があるのか?」を考えることです。


「逆ギレ部下」への対処法 ー 基本編

ここからは、逆ギレする部下への対処法をご紹介して参ります。やってしまいがちですが、一番デメリットがあるのは「なんだその態度は!」と感情的に反応をしてしまうことです。状況がさらに悪化してしまいます。 まずは、以下の3つの方法を実践していきましょう。

① その場で対立しない!

まずはこれだけです。これは重要事項です!感情的な部下につられて、つい上司も怒りで反応しがちですが、 ここで「すぐに言い返す」のはNG。たとえ同じ熱量で言い合いになったとしても、相手は部下ですからいい結果に結びつくことは稀です。周りの人たちにも「上司が部下を感情的に怒鳴った」という印象を与えかねません。

  1. 否定せず、共感を示す
    • 「そうか、〇〇さんはそう感じたんだね」
    • 「そういう考えもあるよね」
  2. いきなり話し合いをせず、落ち着く時間を作る
    • 「明日また時間を設けてゆっくり話そうか」
    • 「お互いに気持ちを整理してからもう一度話そう」

② 「本当の気持ち」を引き出す

否定せずに話を聞きながら、相手が落ち着いてきたら「質問」をしていきます。このときに、部下自身が「自分の本音」に焦点が当たるような質問をしていきましょう。

質問例効果
「今の状況、どんな気持ちだった?」部下が自分の感情を整理できる
「何か辛いことがあった?」不安やストレスを言語化させる
「この件について、どう感じていた?」問題解決の糸口を探れる

第三者の目線で「自分の怒りの感情」を分析してもらいます。悲しかったのか、不安だったのか、パニックになったのか…俯瞰して「自分の本音」と向き合ってもらうことで、段々と冷静な判断ができるようになります。


③ 「次にどうするか?」を一緒に考える

感情の話だけをしても問題は解決しません。 ①➁の対応で冷静になった後は、未来志向の「じゃあ、どうするの?」という対話を心がけましょう。

  • 「この件について、どう改善していけると思いますか?」
  • 「今度、同じことが起きたらどうしていきたい?」

部下の方と一緒に考えられるようにサポートをしていきましょう。

「逆ギレ部下」への対処法 ー 応用編

ここからは、応用編です。「この部下は逆ギレしやすいな」と相手の性格を把握していて、ある程度部下との信頼関係が築けている方、そして冷静に対処できる方におすすめの方法をご紹介します。

①「非言語コミュニケーション」で相手を落ち着かせる

感情的になっている部下に、言葉以外の表現でリラックスしてもらう方法です。この順番で試してみてください。

1.部下が言い返し続ける間、薄く相槌だけをうってリアクションはとらない。
2.部下が「聞いているんですか!」「わかっているんですか!」と、注意をこちらに向けたら、落ち着いた声で「ちょっと待ってね」とゆっくり伝えて、席を外す。
3.お茶やコーヒーなどを持ってきて、「ちゃんと聞いていたよ」と伝える。
4.部下の感情が落ち着いていることを確認して、話し合いをする。


➁逆ギレオウム返し+受け止めて「本音」を引き出す

逆ギレが癖になっていて、一向に話が進まないタイプへのショック療法的な使い方です。こちらも活用する相手を選びますので、お気を付け下さい。部下と同じテンションで、同じ言葉でこちらも言い返します。その後に、冷静に対処するという方法です。

例1.
部下:「嫌ですよ!やりませんよ、わたし!(逆ギレ)」
上司:「嫌ですよ!俺だって嫌ですよ!」(同じテンションで返す)

「・・・まぁでも、〇〇さんが急にそんなに怒るってことは、なにか事情があるんだね」
→ 部下が抱えていた不満や本音が見えてくる。

例2.
部下:「なんで俺ばっかり注意するんですか!(逆ギレ)」
上司:「なんで俺ばっかりって言うんですか!」(同じテンションで返す)

「でも〇〇さんにそう思わせたんなら、申し訳ない。ちょっと今後を一緒に考えよう」
→ 注意されたことを受け止められない部下とは、一緒に考える方向に持っていく。



④ 「物理距離」を取ってリフレッシュする

物理的に場所を変えたり、時間を置いてリフレッシュの提案をします。提案の際には空気を変える必要がありますので、「あのさ…」と小声で話をしたり、「よし!」と明るい声を出したり、相手に「え?」と思わせるトーンで話を切り出してみてましょう。

上司:「よし!じゃあちょっとコーヒーでも飲んでから話そうか?」
→ 場所を変えることで、冷静な対話がしやすくなる。

上司:「あのさ…ちょっと場所変えて、外で話さない?」
→ 外の空気を吸うことで、感情が落ち着きやすくなる。

上司:「わかった!明日、ゆっくり時間とろう。そこで全部聞くから思い切りぶつけて!」
→ いったん時間をおくことで、感情のクールダウンを図る。


ご自身のメンタルケアも忘れずに!

部下の逆ギレに冷静に対応するためには、上司自身のメンタルにも注目をなさってください。出来る限りストレスをためず、長期的に健全な仕事を続けるために、次のようなセルフケアを意識しましょう。

①感情のコントロールを意識する

部下が逆ギレしたとき、上司も感情的になると事態は悪化します。 まずは「落ち着いて対応しよう」と自分に言い聞かせ、深呼吸をして一拍置くことが大切です。

ポイント:
◆深呼吸を3回してから言葉を発する
◆一歩引いて冷静に物事を見る
例. 今の状況を第三者から相談されたら…どうアドバイスする?
どんな対応をするのがベストか?を考える


②「適度な距離感」を持つ

逆ギレする部下に振り回されないために、「相手の感情は相手のもの」という意識を持ちましょう。

ポイント:
◆部下の感情に寄り添いすぎない
◆「仕事の関係」として割り切る態度も大事


③自分を労わる時間をつくる

部下の対応にばかり気を遣っていると、いつの間にか自分が疲れてしまうもの。「ストレスをリセットする習慣」を持つことで、気持ちの切り替えがしやすくなります。

ポイント:
◆自分にねぎらいの言葉をかける「よくやっているよね」
◆1日の終わりに「今日のよかったこと3つ」を書き出す
◆仕事を忘れる時間をつくる(趣味、運動、リラックスする時間)
◆完璧を求めすぎない

まとめ:逆ギレを部下の成長のチャンスに変える!

いかがでしたでしょうか。ただでさえ「注意・指導」というのは、神経をつかうことですよね。その相手から逆ギレされたら、こちらも嫌な気分になり疲労感があるのは当然のことです。

しかし、管理職・上司の役割は「チームが円滑に仕事ができる」状態に整えること。個性的な部下にも対応をする必要があります。接するのが難しい相手には、感情でぶつかるよりも「スキル」を活用なさることをおすすめいたします。

対処法目的
① その場で対立しない部下の怒りを受け止め、冷静になってもらうため
② 本当の気持ちを引き出す怒りの根本原因を知るため
③ 次の行動を一緒に考える前向きな解決策を共に探るため

本日ご紹介した基本的な対応はこちらの3つです。

逆ギレは「その場のトラブル」ではなく、「部下の成長のチャンス」に変えることができます。

実は、私も上司にキレたことがあります。(逆ギレというより、強めに意見を申し上げましたw)
その根っこには、やはり上司に対する「わかってくれない」という悲しい気持ちがありました。私の場合は元々の負けず嫌いの性格もありますが、「絶対に仕事の精度を上げてやる!」とそこからエンジンがかかりました。上司を見返したくて、必死に仕事に打ち込みました。

サービス業でお客様のクレームが貴重な意見となるように、逆ギレの部下の意見も貴重な情報になります。
管理職・上司として一番怖いのは「部下から何も言われないこと」です。

ご自身のメンタルを守りつつ、個性豊かな部下の成長をサポートしていきましょう。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
では、また次回のコラムで(^^)/