こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「うちの部下、転職活動してるのかな…」
そんな不安を覚えたことはありませんか?

  • 有休を平日にまとめて取り始めた
  • 私服だったのにスーツ姿で出社・退社をする
  • 最近、言動に違和感がある
  • 急に業務の引き継ぎを意識し始めた

実はこうした変化から、「部下が転職活動してるのでは?」と気づく上司の方も多いのです。

では、そんなとき上司としてどうすればいいのか?
引き止めるべきかどうか、どう対応するのが正解なのか――
今回は、上司としての判断ポイントを5つに整理してお伝えいたします。


1. 「裏切られた」と感情的にならない

まず一番大事なのは、感情的にならないことです。

「自分がここまで育ててきたのに」「急に辞めるなんて…」と、ショックや怒りを感じることもあると思います。

しかし、部下には部下なりの考えがあり、未来があります。
「転職活動するなんて!」と感情的に否定してしまうと、関係が壊れ、部下の信頼も失ってしまいます。

ここで重要になるのが上司ご自身の「自己承認力」です。
感情が動いたときには自分に集中します。「自分はどう感じているのか?」その感情をまずは自分で受け止め、「あぁそれだけ部下を大切に思っているんだな」と自分の気持ちにOKを出すところから始めましょう。

何年も前に私は自分のステップアップのために、企業を退職することを選びました。それを報告したときに、ある方から言われたのが「見捨てるんですね」という言葉です。これが物凄く衝撃的で、今も鮮明に残っています。私は会社が好きでしたし、業務にもやりがいを感じていました。それでも考えた末、転職してステップアップする道を選んだのです。
その衝撃的な言葉は、引き留めたい気持ちで発してくださった言葉だと思うのですが、私の中で一層転職の覚悟が決まりました。他の方にも「辞めてどうするの?生活できるの?」「もったいないよ」「なかなか厳しいぞ」など、好き勝手なことをあれこれ言われましたが(笑)、決めるのは本人です。部下の考えを尊重することも必要です。


2. 「転職の理由」を見極める

部下が転職活動を始めた背景には、一体何があると思いますか。一旦、転職の理由を考えてみましょう。

  • キャリアアップしたい
  • 今の仕事内容に不満がある
  • 人間関係がつらい
  • 給与や評価に納得がいかない
  • 将来が見えない

例えば、こういった理由が挙げられますよね。ここを見誤って声をかけてしまうと、的外れな引き止めをすることになります。先ほどの私のエピソードも同様です。

なんとか引き留めたくて、「うちに残ってくれたら、やりがいある仕事を用意するよ」と言っても、
転職の理由が「人間関係」「会社の方針」だったとしたら、意味がありません。

部下が転職活動をしていることがわかったら、面談などで落ち着いた空気をつくり、「もし今の仕事に気になることがあれば教えてくれる?」と信頼関係に基づいた対話を試みましょう。


3. 引き止めるなら「条件」よりも「関係性」で

転職を考えている部下に対して、「給与を上げる」「ポストを用意する」といった条件提示で引き止めることもあります。
ですが、一時的には効いても、根本的な解決にならないことが多いです。

本当に必要なのは、「この上司となら、まだ頑張れるかもしれない」と思ってもらえる関係性です。

  • 上司が部下をちゃんと見ているか
  • 日頃から感謝や承認の言葉をかけているか
  • 意見や不満に耳を傾けていたか

もし部下の転職を引き留められるとしたら、こうした“日常の関わり方”を積み重ねた関係性を持つ上司なのです。今、あなたは部下との関係を深められているでしょうか。

引き止めるときに避けたいNGワード

部下の転職活動を知ったとき、焦るあまりつい口にしてしまいがちな言葉があります。しかし、それが逆効果となり、部下の気持ちをさらに遠ざけてしまうこともあるのです。

たとえば、こんな言葉には注意が必要です。

  • 「人が足りないんだよ、今辞められたら困るよ」
  • 「他でやっていけるの?」
  • 「みんな我慢して働いてるんだから」
  • 「恩を仇で返すつもり?」
  • 「もっと頑張れば評価するつもりだったのに」

これらの言葉に共通するのは、「上司や会社の都合」を軸にしている点です。言っている側に悪気はなくても、受け取る部下からすれば「自分の気持ちは理解されていない」と感じてしまいます。

上司として大切なのは、部下の選択を一旦フラットに受け止める姿勢。たとえ動揺していたとしても、「まずは話を聴かせてくれる?」という関わり方が信頼関係を深める一歩となります。


4. あえて「送り出す」という選択肢もある

ここであえてお伝えしたいのが、「引き止めない」という選択肢もあるということです。

部下の成長や可能性を本気で考えたとき、今の職場よりも新天地の方が才能を発揮できる、と感じるならば送り出すのもひとつの上司の姿だと思うのです。

「〇〇さんの新しいチャレンジ、応援したい。でも正直に言えば、少し一緒に働きたいとも思ってる。色々考えて〇〇さんが決めたことなら、応援するよ」

これは、自己承認力が高い上司だからこそ言える言葉です。
自分を満たせているから、他者の選択も尊重できる。
会社の都合や上司としての寂しさは一度おいて、部下の人生を考えて一番良い選択をしてほしいものです。


5. 「今いる部下」に目を向け直す

一緒に働いている部下が転職活動をしているとわかったとき、人によっては「部下を信用できない」「育ててもどうせ辞めていく」と感じてしまうかもしれません。

しかし、そんなときこそ改めて以下のことを考えることが必要です。

  • 今、自分のチームで頑張ってくれている人は誰か
  • 自分は、その人たちと信頼関係を築けているか
  • 感謝や承認は、しっかり伝えられているか

去っていく人への対応だけでなく、仕事を続けてくれている他のメンバーにも目を向けていきましょう
「誰かが辞めるかもしれない」という出来事を、「チームの関係を見直すきっかけ」にしていくことをおすすめします。


最後に:引き止めるべきかどうかは、上司自身の心の在り方が決める

部下が転職活動してる」という事実に動揺するのは当然です。不安になるし、焦りますよね。
大事なことは、その出来事を上司としてどう受け止めるのか、どう対応するのかです。

引き止める、見送る――
どちらを選ぶにしても、そこに相手を尊重する気持ちがあることが重要ですよね。

そして、あなた自身が自分の軸を強く持って、自身の価値を信じられていること。
それが、どんな判断にもにじみ出ます。

部下と真剣に向き合うあなたの姿勢は、きっと周囲の部下の方に届いています。
焦らず、あなたらしい判断をなさってください。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)