こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「部下を育てたいけど、どう関わればいいかわからない」
「最近よく聞く“コーチング”を取り入れたいけど、研修の言葉が難しくて…」

こんなお悩みをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
上司として部下を育成する際に、身につけておくと役立つのが「コーチング」という手法です。

しかし、やみくもに相手に「なぜ?どうしてそう思うの?」と質問を投げかければいい、というわけではありません。こういった「質問技術=コーチング」と考える方もいらっしゃいますが、実はこれが苦痛になっている部下の方は少なくありません。

今回は、部下育成に効くコーチングの基本と、上司がすぐに使える5つの指導法をご紹介します。


まず整理しておきたい4つの関わり方

部下育成の場面では、よく似た4つの言葉が出てきます。ここで違いを整理しておきましょう。

1. コーチング(Coaching)
質問を通して相手の中にある答えを引き出し、主体性を育てる。
今回、メインで取り上げるのはこちらです。

2. ティーチング(Teaching)
知識や方法を「教える」。やり方を知らないときに有効。

3. トレーニング(Training)
繰り返し練習をしてもらい、スキルを身につけてもらう。

4. カウンセリング(Counseling)
現状把握。感情や状況を整理し、安心感を与える。


コーチングで効果を出すには、先にカウンセリングを意識する

相手の意見を引き出そうと、「君はどうしたい?」「どんなことを思うの?」と問いかけても、答えが返ってこない部下はいませんか?

それは、部下がまだ「現状整理」や「気持ちの安心」ができていないからかもしれません。
その状況で質問攻めにしてしまうと信頼関係が崩れかねません。
最初に意識するのは、相手の心理的安全性と信頼関係を構築することです。

私も20代前半の頃、管理職の方との面談で質問攻めにあい、頭が真っ白になって無言になってしまった経験があります。それ以来、面談が苦手になってしまいました。役職も年齢も異なる相手に、心を開いて自分の意見を伝えるのは、なかなかハードルが高いものです。


発想が苦手な部下には「みちびき」も必要

コーチングは「答えは相手の中にある」という前提ですが、発想が苦手な人にとっては“問いかけだけ”では思考が開かずに苦しいこともあります。
そんなときには、選択肢やヒントを渡してみちびくことも大事です。

  • 「AとBのやり方、ほかにも方法は色々あるけど、何がやりやすそうかな?」
  • 「例えば、こういう考え方やこういう正反対の考え方もある。〇〇さんはどう思う?」

「~と思うよね?」といった意図的にこちらの考えに寄せる質問ではなく、本人に自由に考えてもらうためのヒントをいくつか渡します。


部下育成に効く5つのコーチング指導法

ここからは、上司が明日から使える5つのコーチング指導法をご紹介します。

1. 傾聴:最後まで聴く

コーチングがうまく行くかどうかは、「傾聴」が出来るかどうかにかかっています。
途中で自分の意見や口を挟まず、相手の話を最後まで聴き切る練習はしていますか。
「うん」「なるほどね」と、相槌やうなずきなどの反応を返すことで、「自分の話を受け止めてもらえた」と部下は安心します。
私は管理職時代に、忙しさのあまり「で?結論は?」と、ろくに部下の話を聴かなかったことがあります。
話を聴けない上司のもとでは、人は育ちません。「聴くことが承認の第一歩」です。


2. 質問力:未来を描いてもらう

過去への質問「なぜしなかったの?」「なぜできなかったの?」ではなく、「次にどうしたい?」という問いかけをしていきましょう。大事なことは、部下に今よりも前に進んでもらうことのはずです。
質問には、相手の思考を整理し、視点を変えてもらえる力があります。

現場力が高い方の中には、経験をもとにした「直感」で動くことが習慣になっている方もいます。
「何となくやった」「あんまり考えていない」そんな返答もあるかもしれません。
だからこそ、じっくり考えられる1on1は、上司にとっても部下にとっても大事な思考整理の時間なのです。


3. 承認:すでに出来ている部分を認める

目立って大きな結果だけでなく、途中の工夫や努力を一緒に確認しながら認めていきましょう。
「前回より早く仕上げてくれたね」「工夫して取り組んでいたね」

出来ている仕事は当たり前ではなく、日頃の努力や工夫の結果です。
日頃の頑張りを見てくれる上司から承認の言葉は、部下の自己肯定感と自己効力感を育てます。


4. フィードバック:改善の方向を示す

アドバイスや改善点がある場合には、「こういう見方もあるけど、どう思う?」と、一緒に改善をしていく話し合いをしていきましょう。伝え方によっては、よかれと思ってしたアドバイスが「上司からの一方的な指示」のようになってしまうこともあるからです。

新人さんでない限りは、自分の仕事の仕方は自分で決めてもらう。
上司がこの考え方を持っていると、指示待ちの部下は激減していきます。

5. 目標設定:一緒にゴールを描く

改善の方向と同様、ゴールを部下と一緒に描いていきます。
部下は「自分で決めた目標」に向かうとき、最も成長します。
「どんな目標を設定する?」「いつまでにできそう?」と問いかけながら、上司も一緒にゴールを目指すサポートをしていきましょう。
大きなゴールに向かって進む中で、小さな目標を一つずつクリアしていく…
それを上司がサポートをしていくことで、部下は結果を積み上げながら自己承認力が高まっていきます。


自己承認力とコーチングの関係

自己承認力には3つの要素があります。

  • 自己肯定感:ありのままを認める力
  • 自己効力感:自分ならできる!と信じる力
  • スキル:実際に行動する力

コーチングは、この3つすべてを育てます。
上司が「聴く・問う・認める」を意識するだけで、部下の自己承認力は確実に伸びていくのです。

自己承認力について、詳しくはこちらに記載しています。


まとめ:明日からできる一歩

いかがでしたでしょうか。
部下育成に効くコーチングは、質問テクニックだけではないのです。

  1. カウンセリングで現状を把握する
  2. 発想が苦手なら、みちびく質問をする
  3. 5つの指導法(傾聴・質問力・承認・フィードバック・目標設定)を回す

この流れを意識するだけで、部下の主体性とやる気は大きく変わります。
特に、部下の現状把握のための「傾聴」は、丁寧に行うことをおすすめします。

明日からできる小さな一歩は、「部下の話を遮らず聴く」ことです。
それだけで部下の表情が変わり、信頼が深まるはずです。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)