こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「人材育成」と「人材開発」
よく耳にする言葉ですよね。

「同じような言葉に思えるけれど、何が違うのだろう」
「どう使い分ければいいのだろう」
そんな疑問をお持ちかもしれません。

こちらのコラムでは、人材育成と人材開発の違いを
「現場でどう関わればいいか」という視点で整理していきます。

まずは、言葉の意味を明確にするところから始めていきましょう。


人材育成・人材開発|言葉の意味をはっきりさせる

「人材育成」とは、一般的に
「組織に必要な知識・技能・態度を身につけさせ、業務遂行能力を高めること」
と説明されます。

今の仕事を、一定の品質で、安定してこなせるようにする。
OJT、研修、日常の指導など、管理職の皆さまが日々行っている関わりの多くは、この人材育成にあたります。

一方で、「人材開発」は
「個人の能力や可能性を中長期的に引き出し、将来に向けて成長を促すこと」
と定義されることが多くなっています。

こちらは「今できること」だけでなく、
「これからどんな力を発揮できそうか」
という未来志向の視点が含まれます。

管理職は、部下の中長期的な成長も視野に入れているでしょうから、
人材育成と人材開発、どちらも行っているといえます。


近年の人事用語では、
人材開発という大きな枠の中に、人材育成が含まれる
という整理の仕方も増えています。

私自身も、現場感覚としては
「今の課題解決に必要な人材育成をしながら、中長期の能力開発をしていく」
そんなイメージを持っています。

管理職に必要なのは、
「現在の業務遂行能力と将来に向けて成長、どちらも伸ばしていく」
その両方のアプローチです。


「人材育成と人材開発」5つの基準

ここからは、人材育成と人材開発の両方の重要な視点をご紹介します。
上司として、片方に寄った部下育成をしていないか?確認をしてみましょう。

① 今の仕事か、未来の可能性か

人材育成は、今の役割をきちんと果たすため。
人材開発は、その先の可能性を見据えること。

どちらも大切ですが、視点の向きが違います。

② 正解を教えるか、考えさせるか

育成では「こうやる」が増え、
開発では「どう思う?」が増えます。

答えを渡すか、問いを渡すか。
その違いです。

③ 成果がすぐ見えるか、あとから効いてくるか

育成は短期で成果が見えやすく、
開発は中長期的な働きかけなので、後から結果がじわじわと出てきます。

④ 上司は指示役か、伴走者か

育成では教える立場、
開発では一緒に考える立場になります。

⑤ 部下だけでなく、上司自身も育つか

何かを人に伝えることは、非常に学びになります。
特に相手の能力開発の視点に立つと、上司自身の在り方も問われます。


何度も見てきた「能力が開花する瞬間」

ここからは、私の体験談を少しお話しさせてください。
全国チェーンの飲食店に勤務していたころのことです。

あるとき、ホールの人員がどうしても足りず、
調理専門のアルバイトさんに短時間だけ接客をお願いしました。

結果は、想像以上の大成功。動きはぎこちなかったですが、
本人が驚くほど楽しそうで、お客様との会話も自然。
料理に関して、自信を持って説明する姿はとても印象的でした。
それ以来、彼は両方のポジションで
活躍できるスーパーアルバイトさんになりました。

他に、こんな能力開発例もあります。
ある程度の業務をこなせるようになったら、
「次はこれをやってみよう」と
常に一つハードルを上げた目標を一緒に設定することです。

小売店にいたときには、商品の販売目標数を時間ごとに設けていました。
少し難しいくらいがちょうどいいです。
淡々と販売業務をこなすよりも、ゲーム感覚で
「わー!あと30分だ!」と制限時間があると、みんな火がついたように動きます。

「〇〇さん、あと10個売れる?いける?」と声をかけて、せかすのも大事です(笑)
インセンティブをかけた目標設定をして、販売数が劇的に伸びたこともあります。
マニュアル通りの育成だけでは起きなかった変化です。


人材開発は「上司がどれだけ部下を見ているか」で決まる

こうした変化に共通しているのは、
上司が部下をよく見ていかどうかです。

・今の力量
・余力
・興味関心
・性格や価値観

これらを見ていないと、仕事の量も、ハードルも、的外れになります。
ハードルが高すぎれば心が折れ、低すぎればやる気が下がる。

例えば、声のかけ方ひとつ、任せる仕事ひとつで、
人のやる気や行動は驚くほど変わります。

人材開発とは、特別な研修を受けさせることではありません。
その人に合った挑戦を用意できるかどうか。ここがすべてです。


作業を教えるだけで終わらせない。
ミスを減らすだけで満足しない。

人は、思っている以上の力を潜在的に持っています。
私自身も歴代の上司に、たくさんの挑戦をさせていただきました。
入社3日で退職を考えていた社員が、やがて教育をすることになるなんて、思ってもみなかったことです。
諦めずに部下の可能性を信じることを教えてくださった皆さんに感謝しています。


自分自身を承認し、育てるところから

いかがでしたでしょうか。
人材育成と人材開発、言葉の違いをご紹介しながら、
5つの大事な視点をご紹介しました。

長文のコラム、ここまで読んでくださっているあなたは、
「人を育てたい」と本気で考えている方です。

忙しい中で、悩みながら、試行錯誤している。みんなが出来ることではありません。
まずは、そんな今のご自身を「よくやっている」と認めましょう。

そのうえで、
・部下をちゃんと見ているか
・決めつけていないか
・安全な枠におさまっていないか

少しだけ振り返ってみてください。
自己承認力(自分を認め、信じられる力)が高い上司ほど、部下の可能性も信じられます。

人材育成と人材開発、言葉の使い分けはさほど重要ではありません。
大事なのは「人の可能性を、どう育てていくか」

上司次第で、チームは大きく変わります。
いつも自分に真剣な問いを持ち続けることこそが、管理職としての力です。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)