こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「若手が育たない」
「何を考えているのかわからない」
「どう育てていいか悩んでいる」

若手人材育成について、こうした声を管理職の方から多く伺います。
そして指導する立場の方は、次のような対策を考え始めます。

・どう教えればいいか
・どう伝えれば響くか
・どう指導すれば自立するか

ですが、若手育成がうまくいかない現場を見ていると、
教え方以前のところでズレているケースが非常に多いのです。

今回は、私が新入社員研修・若手社員研修を行う際に、必ず意識している視点をもとに
「若手人材育成で最初に整えたい3つの大事なこと」をお伝えします。


若手育成は「始める前」から始まっている

私は若手社員研修を行うとき、いきなり若手の前に立つことはありません。
必ず事前に、その若手が置かれている状況を調べます。

・どんな上司のもとで働いているのか
・職場の雰囲気はどうか
・どんなことを期待されているのか
・最近、どんなことでつまずいているのか

これらを、上司や関係者から丁寧に聞き取ります。
新入社員研修の場合は、採用担当の方からお話を伺います。

人材育成は相手を知ることから始まるからです。
これは研修講師としての姿勢というより、コミュニケーションの原理原則です。


① 若手を「理解する姿勢」を整えているか

若手育成で最初に整えたい一つ目は、
若手を理解しようとする姿勢です。

上司の考えを理解してもらう、
その前に相手を理解しようとしていますか?

コミュニケーションは、相手を知ることから始まります。
これは有名な『7つの習慣』でも示されている
「まず理解に徹し、そして理解される」という原則と同じです。

しかし、実際には
・若手だからこうだろう
・最近の世代はこうだ
・自分の若い頃はこうだった
と、理解する前に、決めつけがおこることも多いのです。

世代が違えば、価値観も仕事への姿勢も違います。
全く違った環境で育ってきた相手に対して、
「わかるだろう」「察してほしい」は通用しません。

例えば、私の世代はまだ
親や先生が子どもに体罰を与えることがよくありました。
叩かれたり、廊下に立たされたり、そんな光景を何度も見たことがあります。
しかし、今はもう体罰や虐待は、暴行罪や傷害罪になりますよね。前提が違うのです。

だからこそ、世代が違うほどわからないことだらけで当然。
教える前に、教えてもらう姿勢が必要になります。
人材育成に必要な情報を、自分から受け取りにいく姿勢です。


② 日々の「観察」をしているか

若手を理解するために欠かせないのが、日常の観察です。

・挨拶の仕方
・声の大きさ
・表情
・雑談への入り方
・受け答えのスピード
・仕事への向き合い方
・注意されたときの反応

これらは、面談や報告書からは見えてきません。
日々の関わりの中でしか分からない情報です。

例えば、挨拶の声が小さくなりがちな若手がいたとします。

それを
「やる気がない」「社会人として未熟だ」
と判断するのは簡単です。

しかし、日々の様子を観察していくと、
・周囲の視線を気にしている
・失敗経験が続いて自信を失っている
・上司の反応を過度に気にしている

こうした背景が見えてくることもあります。

背景を知らずに言葉を発すると、相手との溝ができます。
相手の背景や気持ちを想像できれば、自分が選ぶ言葉も行動も変わります。

人材育成とは、指示や評価をすることではなく、
情報を集め続けて、寄り添うことでもあるのです。


③ 「教える前に整える」環境を意識しているか

三つ目は、若手が動きやすい環境が整っているかどうかです。
物の置き場所、専門用語の多様、長年勤務している方の立場が強いなど、
職場がベテラン仕様になっていませんか。

若手が動けない原因は、能力不足よりも
「環境が動きづらい」ことが多いのです。

さらに「何を期待されているかわからない」
こんな場合もよくあります。

・どこまでやればいいのか
・どの手順でやればいいのか
・失敗していい範囲はどこか
・判断していいのか、確認すべきなのか

この指示が不明確なままでは、若手はどうしても慎重になります。
慎重になれば、動きは遅くなります。

「主体性がない」「自分で考えない」
そうではなく、実際には動けない条件が揃っているだけかもしれません。

若手育成とは、失敗させないことではありません。
動いてほしい範囲、失敗してもいい範囲を決めておくことです。

この範囲が明確になると、若手は安心して動けます。


「教え方」を工夫する前に、「見るべきもの」がある

若手育成というと、伝え方・叱り方・褒め方といった
「教え方」に目が向きがちです。

しかし、教え方を変えても成果が出ない場合、
その前提となる部分が整っていないことがほとんどです。

・相手を理解しようとしているか
・日々の行動を観察しているか
・動きやすい環境を整えているか

この3つが整っていない状態で、
どんな言葉を選んでも、若手には届きません。

まずは、ここを確認されることをおすすめします。


世代が違う相手にこそ、「謙虚さ」が必要になる

世代が違う相手ほど、「謙虚さ」が求められます。

「〇〇について教えてもらえますか?」
「Aさんの意見を聞かせてもらえますか?」

自分の常識が通じない相手だからこそ、「教えてもらう」という意識を持つことが、
結果的に育成をスムーズにします。

若手から話を聞き、若手の反応を観察し、若手の背景を想像する。

その積み重ねが、信頼関係をつくり、初めて指導が機能する土台になります。

実際に、お話を聴いてみるととても面白くて学びになります。
管理職からは出ないような「斬新なアイデア」をくれるのも、若手社員です。

ある企業様は、「新卒採用の拡大」を目標に掲げて、
そのプロジェクトを若手社員たちに任せる試みをしていました。

結果、若手社員たちの意見を取り入れたSNSでの宣伝方法や
ホームページのリニューアルをし、大きく目標達成。
若手社員たちも自分たちが活躍できるプロジェクトに夢中で取り組んでいました。

管理職には、管理業務という得意分野があるように、
若手社員たちにも力を発揮できる得意分野があります。

謙虚な姿勢で、若手社員と向き合う上司だからこそ、
尊敬も得られるのだと私は考えています。


若手育成は「スキル」ではなく「姿勢」から始まる

いかがでしたでしょうか。
若手人材育成で最初に整えたいのは、「指導スキル」ではありません。

相手を知ろうとする姿勢。
日々を観察する意識。
教える前に環境を整える視点。

この3つが揃ったとき、
若手育成は自然と前に進み始めます。

若手が育っていない・変わらないのではありません。
条件が整っていないだけのことも多いのです。

まずは今日から、相手の挨拶、雑談、受け答え、仕事ぶりを
少しだけいつもより丁寧に見てみてください。

そこに、育成のヒントがあるはずです。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)