こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「部下が思うように育たない…」
「何度言ってもミスが減らない…」
「こちらの言いたいことが伝わっていない気がする…」

指導の悩みは、どの職場にもつきものです。
コミュニケーション同様、部下指導には「正解」はありません。
だからこそ、上司が柔軟に学び、工夫し続けることが求められます。

今回は、これまでの現場経験・研修内容・コラムの反響をもとに、「指導が楽になる!部下指導の大事なこと10選」として、1本にまとめてみました。
どれもすぐ実践できるものばかりです。一緒に確認していきましょう。


1.まず「自分が変わる」ことから始める

上司が異動しただけで、部下の仕事ぶりがガラッと変わる。そんな話を聞いたことはありませんか?
それほどまでに、上司の影響力は絶大です。

部下は、上司の表情・トーン・言葉をよく見ています。
自分が強く出れば、部下は萎縮する。自分が弱く出れば、部下が図々しくなる。

だからこそ、空気をつくるのは上司の役割です。
盛り上げたいときは、笑顔で声を大きく。全員に声をかけていく。
緊張感を持たせたいときは、静かに落ち着いたトーンで語り掛ける。

いつも「素」の自分のままではチームは動きません。
上司には「演じる力」が必要です。

「演じる=場に応じて自分の在り方を選ぶ力」
成果が出たときには思いきり褒め、モラルが崩れたときには相手に合わせた厳しさで接する。

自分をコントロールしてチームを導くこと、これが本当のリーダーシップです。

▶NG:「部下に変わってほしい」とばかり考えている上司
自己流の育成をしている方は、相手にばかり「変わってくれ」と求めます。
自分の思うとおりに育たない部下にストレスを感じて、感情的な言動を繰り返す…。
私もまさにこのタイプでした。自分の手法を変えずに、相手が変わることを望んでいました。
このアプローチは、部下は否定されたように感じ、無価値感を味わいます。
「相手を変えたい」と思ったら、「自分が変わること」です。


2.ミスを責めず、「次どうする?」の視点を持つ

部下がミスをしたとき、どんな声をかけていますか?

「またやったの?」「何度言えばわかるの?」
もしも、自分がミスした際にこれを周囲から言われたら、どうでしょうか。

重要なのは、「責める」ではなく「次に進む」こと。

例えば、
「今回のミス、どうすれば防げたと思う?」
「次からはどう工夫してみようか?」

といった問いかけを通じて、部下が自分で考える力を育てていきましょう。

▶NG:部下のミスを責める上司
「また失敗?」「なんでこんなこともできないの?」と責め続ける上司のもとでは、
部下は萎縮し、防衛本能として自分から動くことがなくなります。
上司が感情的に相手を責めたり、誰が悪いか犯人捜しをする言動は、
部下の自発性を失わせ、消極的な指示待ち部下を作り出してしまうのです。


3.「~してほしい」と具体的に伝える

「ちゃんとやって」「次は気をつけて」だけでは、指導の言葉としては中途半端です。
多くの部下は、上司ほどの経験もなく視野も狭いもの。曖昧な表現が伝わらないこともあります。

たとえば、
「明日の15時までに、A社向けの資料を10枚以内にまとめて提出してほしい」
というように、時間・量・目的手法を明確に伝えるように意識しましょう。

自分の指示に5W1Hが入っているか?確認をしてみましょう。

▶NG:抽象的な指示を出す上司
「そこまで言わなくても伝わるだろう」と、抽象的な指示を出す上司は多いです。
その気持ちもわかりますが、それでは部下の成長は遅れるばかり。
たしかに曖昧な表現でも伝わる部下もいるかもしれません。しかし、それは単に相手の察しが良いだけです。指示の出し方として、誰が聞いても「ここにおいてね」よりも、「この棚の、上から3段目においてね」の方がわかりやすいし、記憶にも残りやすいですよね。


4.部下の強み・個性に着目する

「なんでこんなことも出来ないんだ」と、弱みに焦点を当てていませんか?
上司は、部下の活躍をサポートする立場です。
「この部下は何が得意なんだろう?」という相手の強みに注目をしましょう。

たとえば、

  • まとめるのが得意な人には資料作成を。
  • 対人対応が得意な人には顧客とのやり取りを。

上司自身が“部下を見る目”を養うことが、育成の第一歩です。

私は飲食店に勤めていましたが、調理が好きではありませんでした(笑)
接客の方が得意で好きでしたので、上司も私の強みを伸ばそうとしてくださいました。
苦手分野・好きではない作業ばかりに追われていたら、きっと仕事が続いていなかったと思います。

▶NG:すべてに100点を求める上司
部下が得意なもので結果を出しているのに、「でも△△が苦手なんだよなぁ」とマイナス面を見ていませんか。せっかく頑張っているのに上司に評価されない状態だと、部下の自己肯定感は下がっていく一方。
文章、数字、プレゼン、対人関係など、得意分野は様々です。
得意分野の仕事を任せるだけで、部下はイキイキと輝き始めます。ぜひ試してみてください。


5.信頼関係は「接触頻度」でつくる

普段、部下に頻繁に声がけをしていますか。月に1回1時間の面談を行うより、毎日1分間ほど会話を重ねている上司部下の方が関係は深まっていきます。

信頼関係は、「質」より「量」の積み重ねです。
「おはよう!昨日もお疲れ様!」「メールくれて助かったよ」「報告してくれてありがとうね」これらの言葉を毎日届けていますか?

目的は、仲良くなることではなく、仕事仲間として信頼関係を築くことです。
上司にとって仕事に必要な情報が自然と入ってくる。部下の成長に気づける。トラブルの種が小さいうちに判明する。日頃のやりとりがあるからこそ、相手への指導もしやすくなり、スムーズに仕事が進められるのです。


NG:接触回数が少ない、プライベートに関する話題が中心の上司
「忙しいから話しかけない」「会話は無駄」と、部下との接触を減らすと、自分に入ってくる情報は激減します。部下にとって、話しかけにくい上司になってしまうからです。
反対に、仲を深めようとして「昨日の休みは何してたの?」「家に帰ったら何してるの?」とプライベートの話題から、会話の糸口をつかもうとするのもおすすめしません。あくまでも上司と部下は、仕事関係者。まずは、「先日の商談お疲れ様!〇〇社のAさんお元気だった?」など仕事の会話からスタートしましょう。


6.成果が出たら、承認&深堀りしていく

成果を上げたとき、「よかったね」で終わっていませんか?
結果が出たときこそ、部下の成功パターンを発見するチャンスです。
具体的に部下を褒めるのはもちろんですが、“なぜうまくいったのか?”を具体的に聞いてみることが重要です。

たとえば、
「プレゼン、伝える順番が工夫されていてわかりやすかった!どうやって組み立てたの?」
「今日の対応、相手の立場に立った説明ができてたね!よかったよ!何か勉強したの?」

上司と会話をすることで、部下は自分の強みを再確認できて、次のステップに活かしやすくなります。

NG:褒めない、リアクションが薄い上司
何をしても、「それくらいできて当たり前」「別に普通だ」とリアクションの薄い上司のもとでは、部下は方向性を見失います。褒める・認める表現は、「この方向で合っているよ」という指導でもあるのです。
部下の承認欲求も満たされないので、やりがいを感じにくく、不満が募りやすくなります。


7.承認の言葉は“日常の当たり前”にもどんどん伝える

「ありがとう」「助かった」「よくやってくれているね」これらの言葉を日常的に伝えていますか。
挨拶、報連相、時間を守る、体調管理、会議室準備、掃除、ゴミ捨て…などなど。
「日々、当たり前としてやっていること」ほど大事なことが多いのではないでしょうか。

  • 「〇〇さん、会議室の準備ありがとう」
  • 「〇〇さん、相談してくれてありがとう」
  • 「〇〇さん、情報くれて助かったよ」

「よろしくお願いします」「ありがとうございます」「助かりました」
こういった言葉が行きかっている職場は、心理的安全性も高く、チームの雰囲気が良いので仕事がしやすい環境といえます。

NG:ありがたさのハードルが高い上司
出勤して当たり前、与えられた業務をやって当たり前、報告するのは当たり前、給料が出て当たり前…。
「ありがたさ」を感じにくい上司は、周りに不満を感じることも多いものです。
そんな上司のもとで働く部下は、よほど自己承認力が高くない限りは仕事に対するやりがいを失っていきます。


8.感情の波にのまれない

忙しいとき、ミスが重なったとき。そんな場面で指導をする機会も多いのではないでしょうか。
感情的な状態で言葉を伝えると、きつくなってしまうこともありますよね。

感情の波にのまれないためにおすすめなのは、「時間」を味方につけることです。
感情が高ぶっているときには、その場で指導しない。(緊急の場合は別)
時間をおいて、自分が落ち着いてから言葉を選んで伝えましょう。

自分の感情を安定させるために、有効なのは日々の自己承認です。
「今日も忙しい中でよく耐えたね」
「本当は怒鳴りたかったけど、冷静に対応できたじゃない」
「バタバタして焦ったけど、よくやったよね」

自分をねぎらうことで、余裕と落ち着きを保てます。

NG:不安・焦り・イライラをぶつける上司
感情の起伏の激しい上司のもとでは、部下は「上司の顔色ばかり伺う」ようになります。
上司の機嫌次第で雰囲気が変わるようでは、チームで結果を出せるわけがありません。
1つめにもお伝えしましたが、上司は演じる力も必要です。
たとえ内心は焦っていても、部下には余裕の顔を見せられるよう、自分をコントロールする力を高めていきましょう。

9.「一緒に考えよう」というスタンスを持つ

役職=役割です。人間として偉いわけでもないですし、大半の方がとびぬけた才能があるわけでもありません。上司だからと言って、すべて自分一人で決定し、部下に指導していく必要はないのです。

チームのことは、部下の方々に相談することがおすすめです。
「どう思う?」と意見を聞いてみる。
「一緒に考えよう」と提案してみる。

こうした関わりをしながら決めたことは、部下の方も積極的に動いてくれますし、チームが一体となりやすいです。一人で仕事を抱えがちな方は、ぜひ部下に相談するスタンスを持ってみてください。
部下を頼り、任せることも、上司の大事な仕事の一つです。

NG:一方的な命令ばかりの上司
「いいから黙って言う通りにやって!」と一方的に指示・命令するばかりだと、
指示がないと動けない“受け身部下”になりやすいです。
自分で考え、動ける人材に育てるには、上司が相談をするというスタンスが重要です。


10.指導とは、相手の可能性を信じること

最後に、一番大事なことをお伝えします。
私は「指導とは相手の可能性を信じること」と考えています。
うまくいかない時期でも、失敗を繰り返していても、
「この方はもっと伸びる!できる!」と信じて関わる。

20代の頃、私は同期の中でも役職につくのが一番遅かったです。
入社して1年目で心が折れて、メンタル不調で体調を崩し、いつも仕事を辞めたいと考えていました。
「あんたは仕事ができない」とパートさんにも散々言われました。

そんな中、上司はいつも「私の仕事に対する姿勢」を褒めてくれました。
それが私の救いとなりました。ずっと味方でいてくれたのです。

上司は、部下を信じて守る。歴代の上司から教わったことです。

NG:「どうせできない」「まだこの仕事をさせるのは早い」と考える上司
本当に部下を育てたいですか?その覚悟はありますか?
上司が部下に対してどんな気持ちで接するか、どんな行動を示すかで部下の成長度合いが変わります。
部下は上司の鏡、ですね。


まとめ|あなたの指導の仕方が、部下を変える

今回ご紹介した10個の指導法、あなたはいかがでしょうか?
今の段階で「できている」と思う項目に✓をつけてみてください。あなたの強みと、これから伸ばすポイントが見えてきます。

No.指導のポイントできているもう少し
1「自分が変わる」姿勢で部下に向き合っている
2ミスを責めず、「次はどうする?」と前向きに聞いている
3指示は曖昧にせず、行動レベルで具体的に伝えている
4部下の強み・個性に注目して関わっている
5日々の小さな声かけや接点を大切にしている
6成果を見つけたら、しっかり褒めている
7日常の当たり前にこそ「ありがとう」を伝えている
8自分の感情を整えてから言葉を選んでいる
9部下と「一緒に考える」姿勢を持っている
10部下の可能性を信じて関わっている

部下指導のコツは、テクニックではなく「在り方」と「習慣」です。
自己承認力の高い上司は、ブレずに部下を育てる精神力と実践力を持っています。

ぜひ、今回の10のポイントから
「これならできそう」と思うものを一つ、実践してみてください。

そして何より、頑張っているご自身を労うこともお忘れなく。
「よくやってるよね」その一言が、あなたの次の一歩を支えてくれます。

指導に正解はありません。あれこれ試していくうちに“自分らしい関わり方”はきっと見つかります。
今回のコラムが、その一歩になりますように。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)