
こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。
「部下が言うことを聞かない」
「伝えたことが伝わっていない気がする」
「返事はするのに、動かない」
管理職の方からそんなご相談を、これまで何度となく受けてきました。こちらのコラムをお読みくださっているあなたも、部下育成に力を注いでいる真っ最中かもしれません。
部下育成に限らず、人間関係に困ったときには、こんな風に捉えると良いと私は考えています。
「一旦、立ち止まるタイミングだ」
人見知りで、天邪鬼で、コミュニケーション力が低い私は、過去に何度もその場面を経験してきました。
20代で店長になり、何十人ものスタッフを束ねていたときも、教育担当として全国を飛び回っていたときも、「伝わらないもどかしさ」に何度もぶつかってきました。
あるとき気がついたのです。
これまでのやり方・我流で接し続けるから、状況が変わらないんだと。
「自分が変わることが、相手が変わるきっかけとなる」
この気づきが、育成における大きな転機となりました。
部下が言うことを聞かない原因は、私自身にあった
私は20代で飲食店の店長を経験し、その後、全国チェーンの教育担当として1,300名以上のスタッフ育成に関わってきました。いつでも、どこでも自分なりに一生懸命やってきたつもりでした。
そんな中でも、どうしても指示や思いが伝わらない方々がいました。
何度注意しても動かない。声をかけても反応が薄い。どこかよそよそしい。
絡みづらい部下に対して、不安・焦り・イライラが募ってきました。
後々わかるのですが…原因は、私の「言葉や態度」でした。
部下の反応は、上司の言動に大きな影響を受けます。
伝わらなかったのではなく、「伝わる状態」にまで持っていけなかったのだと気づかされました。
上司は忙しいときこそ、笑顔でいること!
サービス業の現場で私が体得したのは、
「笑顔」はチームづくりの“最強ツール”であるということです。
忙しいとき、不安がある、緊張しているときほど、
上司は意識して口角を上げて、いつもご機嫌そうに振る舞う。
「表情は、“見せる”もの」
そして、やわらかい表情は自分の感情を整え、周囲に安心感を与えます。
忙しいとき、余裕がないとき、不機嫌な顔で指示を出すと、部下は「機嫌が悪いのかな」と身構えます。
間違いを正すとき、注意をするときも同様です。
相手を威圧する表情や声はインパクトはあるのですが、肝心の内容が伝わらないことも多いです。
その積み重ねが、部下の「聞く耳」を閉ざす原因になっていたのだと、今では痛感しています。

なぜ部下が言うことを聞かないのか?5つの背景
ここからは、私が現場で実感してきた「部下が言うことを聞かない理由」を、代表的な5つに整理してご紹介します。
1. 上司の指示が抽象的で、曖昧になっている
「早めに」「ちゃんと」「しっかりやって」は、受け取る側にはとても曖昧です。
改善のヒント
「明日の15時までに」「〇〇のフォーマットで」と、
行動が具体的にイメージできる指示を出しましょう。
2. 上司の機嫌に左右されるから、様子をうかがう
機嫌が良い・悪いをわかりやすく表に出していませんか?
感情の起伏が激しい上司に対して、部下は本音を言いづらくなります。
改善のヒント
「笑顔」や「安定したリアクション」は、部下にとっての“安心材料”です。
3. 信頼関係が薄く、上司の言葉を信用できない
時間を守る、期限を守る、約束を守っていますか。部下からの頼まれごとを忘れていませんか。
言うことがコロコロ変わっていませんか。「言う通りにしたのに損をした」「責められた」経験があると、部下は動きにくくなります。
改善のヒント
日々のコミュニケーションを増やしましょう。守ることはしっかりと守り、自分から歩み寄る姿勢が信頼のきっかけになります。
4. 上司の言動が偉そう・上から目線
上司・部下の関係は、組織の役割だけのものです。人としての価値や明確な能力の差ではありません。
お互いに協力をし合うのが仕事仲間です。
改善のヒント
「〇〇してくれると助かるな」「お願いしてもいい?」と、依頼口調にシフトするだけで関係性が変わります。
5. 上司が「言うことを聞かせよう」としている
そして、最も根本的な要因がこれです。部下に対して「言うことを聞いてくれ」と思っていませんか。
耳が痛い方もいらっしゃるかと思いますが、とても大事なのであえて強めの言葉でお伝えします。
「言うことを聞かせたい」という発想は、もう時代に合っていません。
「なんで思った通りに動かない?」「上司が言った通りやればいい」
この考えから少しずつ卒業していきましょう。
部下は物ではありません。使う、コントロールするなんてできるはずがないのです。
現代の職場に必要なのは、「信頼と協働」。
つまり、「協力してもらう」「一緒に進める」という関わり方です。
その視点に立つと、伝え方・頼み方・関係の築き方がすべて変わっていきます。

上司が変われば、チームが変わる!対処法5選
部下を変えるのではなく、「関わり方を変える」。
ここでは、自己承認力の3要素(自己肯定感・自己効力感・スキル)に基づきながら、
部下との関係を改善するための5つの実践スキルを、丁寧に解説していきます。
1. 「伝えた」ではなく「伝わったか?」を確認する
上司側は「ちゃんと伝えたつもり」でも、部下には伝わっていないことがあります。
これは能力の問題ではなく、情報の受け取り方・タイミング・関係性など、さまざまな要因が関係しています。
「言わなくてもわかるよね」「察してくれるよね」は、通用しません。
今の部下世代は、“言葉での明確な指示”を必要としています。
- 指示後に「今の説明で不明な点はある?」と確認を入れる
- 部下が要点を復唱してくれたら「ありがとう、それで合ってるよ」と承認する
- 必要に応じて、チャットやメモで形に残す(視覚化)
指示・指導は、「言った」ではなく「伝わった」がゴールです。
2. 小さな成功体験を一緒につくる
どんな部下の方でも、「できた!」という感覚を持てたとき、自然と動きが良くなります。
これは“自己効力感”が高まる瞬間です。
反対に、大きな仕事をいきなり任されたり、曖昧な業務で失敗した経験があると、
自信を失い、上司の指示にも慎重になることがあります。
- 相手が得意な業務をお願いする
- 完了後には「ありがとう!助かったよ」と短くてもいいので承認の言葉をかける
- タスクの難易度を上げていく際には、段階的に行う
「部下を勝たせる」発想が重要です。「成功の実感」が部下の自発性を育てます。
3. 承認の言葉を毎日ひとつ届ける
「注意や指摘はするけど、褒めるのは苦手」そうおっしゃる管理職の方は、とても多いです。
「部下の長所がひとつも見つからない」と仰る方もいるほどです。
では、ご自身はいかがでしょうか。
日々の仕事の中で「あのお仕事素晴らしかったです」「助かりました」と言われたら嬉しいはずです。
お客様やお取引先様の「ありがとう」のために、お仕事を頑張っている方も多いのではないでしょうか。
部下の方もまったく同じです。承認の言葉は、やる気とやりがいに繋がります。
日々の上司からの承認の言葉が、「上司を信じて動ける」下地をつくるのです。
- 成果だけでなく、プロセスを見て声をかける(例:「期日通りで安心したよ」)
- 他人の目がない場で、落ち着いたトーンで伝えるとより響きます
- 「ありがとう」「丁寧だったね」「報告が分かりやすかった」など、小さな承認を積み重ねる
無理に褒めるのではなく、「気づいて言葉にする」だけでいいのです。
4. 表情と声のトーンを整える
「上司の機嫌が読めないから話しかけづらい」
多くの部下が感じている不満の一つです。
怖い顔をしていたり、バタバタしていたり、ため息が多かったりすると、
部下は指示より先に“空気”を読んで、動きにくくなってしまいます。
上司は、常に部下に見られています。その意識を持っておきましょう。
- 人に話す前に、1秒だけ「深呼吸」+「口角を少し上げる」クセをつける
- 自分の表情をスマホのカメラなどで撮影しチェックしてみる(意外と無表情なものです)
- 声のトーンを「少し高め・少しゆっくり」にするだけでも、安心感が出ます
笑顔は筋肉トレーニングで身につきます。自然に口角が上がっている顔つきを作りましょう。
あなたのご機嫌度が職場の空気を変えます。
5. 「どうしたら?」の問いで未来を一緒に描く
部下がミスをしたとき、「なんでできなかったの?」と原因を問い詰めたくなる気持ち、よくわかります。
しかし、その問いは部下を“過去に引き戻し”、自己防衛の姿勢を強めてしまいます。
視点を未来に向けるように質問を変えましょう。
「どうしたらできそうか?」という問いは、前向きな関わりを生み出します。
この“問いかけの質”が変わると、関係性が驚くほどスムーズになります。
- 問題が起きたときに「何が悪かったの?」ではなく、「次どうすればいいと思う?」と聴く
- 必要なら「じゃあ一緒に考えようか」と並走する姿勢を見せる
- 良いアイデアが出たら「いいね、その発想!」と承認する
「なぜ」より「どうしたら」で、思考は未来に向かいます。

まとめ:部下は変えられなくても、「関わり方」は変えられる
いかがでしたでしょうか。
上司として、「部下が言うことを聞かない」という状況は、非常にストレスになりますよね。
“相手の問題”として見ると、その状況は改善が難しいですが
“自分の取り組むべき課題”としてなら、前に進める気がしませんか。
自己承認力とは、
「自分を認め、信じて、前に進める力」。
上司であるあなたが、この力を育てることで、
自然と、部下との信頼関係は深まり、職場の空気は柔らかくなっていきます。
明日から変化を起こす、3つの小さな一歩
- 朝、鏡の前で口角を上げる
- 部下に「ありがとう」を伝える
- 問題が起きたとき、「どうしたら?」と問いかけてみる
この3つだけでも、空気が変わっていくことを感じるはずです。
一緒に挑戦していきましょう。
本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)