自己承認力コンサルタント協会代表理事の山本正乃です。いつもコラムをお読みくださり、ありがとうございます。

私が担当するコラムでは、「自己承認力®」に関する様々なテーマを取り上げています。今回は、「自己承認」と「自己肯定」の違いについてお伝えします。

この二つは、どちらも“自分を認める”ことに関わる大切な心のはたらきです。しかし、意味やアプローチが異なり、両方をバランスよく育てることが、自信と安心のある人生の土台となります。

自己承認:行動や努力を「よくやったね」と認める力

「自己承認」とは、自分が行ってきた行動や努力に対して、自分自身で認めることです。
「人に褒められるかどうか」ではなく、「自分で自分をどう見るか」に焦点を当てた、内発的な行動評価の力です。

たとえば…

  • 「苦手な人に意見を伝えられた」→「勇気を出した私、えらい!」
  • 「体調が悪い中、なんとか家事をやり切った」→「がんばったね、私」

このように、“できたこと”や“踏ん張ったこと”を自分の目で見つめ、承認する力が、次のチャレンジへのエネルギーになります。

心理学でいう「自己効力感(self-efficacy)」とつながるこの力は、
「私は、できる」「また挑戦してみよう」と、行動を生み出す源となるのです。

自己肯定:どんな自分にも「OK」を出す受容の土台

一方で、「自己肯定」とは、できたかできなかったかにかかわらず、自分の存在そのものに価値があると認める感覚です。
これは無条件の自己受容の姿勢であり、「私は私でいい」と思える心の土台です。

たとえば…

  • 「今日は何もできなかった。でも、それも私」
  • 「失敗したけれど、そんな自分も否定しない」

このように、「自分の弱さや欠点、うまくいかない日も含めて“全部まるごと認める”」ことが、心の安心感につながります。

心理学では、「自尊感情(self-esteem)」に近い概念であり、ストレスや失敗の中でも自分を見捨てずにいられる力となります。

自己承認と自己肯定の違い(比較表)

自己承認と自己肯定・比較表

項目自己承認自己肯定
対象行動・努力・成果(Doing)存在そのもの(Being)
アプローチ自分の行動や努力自分の価値や存在
得られる感覚達成感・自己効力感安心感・自己受容
心理学的対応Self-Efficacy(自己効力感)Self-Esteem(自尊感情)
具体例「頑張ったね、私」「私は私でいい」

一方だけでは不安定になる

  • 自己承認が弱いと…
     努力しても満足できず、「自分はまだまだ」「全然できていない」と感じやすくなります。
  • 自己肯定が弱いと…
     うまくいかないと自分を責めやすくなり、「完璧でなければ存在価値がない」と思い込んでしまいます。

このように、どちらか一方だけでは心のバランスが崩れてしまうのです。

大切なのは、

  • 「よくやってるよ、私」(自己承認)
  • 「うまくいかなくても、そんな私でいい」(自己肯定)

この2つの心の声を、同時に育てていくことです。

実例紹介:52歳・Aさんの変化

当協会の講座に参加されたAさん(52歳)は、長年「私は何もできていない」「努力が足りない」と自分を責め続けていました。

まず行ったのは、「できたことリスト」を書き出すワーク。

最初は「何も思い浮かばない」と話していたAさんでしたが、対話を重ねるうちに、

  • 子どものお弁当を毎日作っていたこと
  • 両親の介護を5年間続けていたこと
  • 職場で同僚の相談に乗っていたこと

を思い出し、「私、けっこう頑張ってたんだ」と、ぽろっと涙をこぼされました。

その瞬間、「自分の努力を自分で認める(自己承認)」ことが始まり、
さらに「完璧じゃなくても、私は大切な存在だ(自己肯定)」という気づきへと広がっていったのです。

その後のAさんは、日々「小さなできたこと」を記録しながら、自分を励ます習慣を続けています。「前よりも笑える日が増えました」と、今では前向きな言葉を自分にかけられるようになったそうです。

自己承認力Ⓡとは?

当協会では、「自己承認力Ⓡ」を次のように定義しています:

自己承認力Ⓡとは、「自分を認め、自分を信じて前に進めるチカラ」
(※商標登録済)

このチカラは、以下の3つの要素を同時に高めることで育まれます:

  1. 自己肯定感
     → ありのままの自分を否定せずに受け入れる力
     例:「ミスした自分も、今の私。それでも大丈夫」
  2. 自己効力感
     → 「できる」と信じて、未来に向かって挑戦する力
     例:「不安だけど、やってみようと思える私でいたい」
  3. スキル(特にコミュニケーションスキル)
     → 自分の気持ちや考えを適切に伝える力
     例:「ありがとう」「ごめんね」「私はこう思う」と自然に言える

この3つが重なった部分に「自己承認力Ⓡ」が形成されます。
つまり、「どんな自分も受け入れながら」「挑戦しようと信じる力」を持ち、
「他者との関係の中でその思いを表現できるスキル」を備えることで、他人の承認に依存しなくても“内側に確かな実感”を持って生きられるようになります。

この“内発的な安心感”こそが、自己承認力Ⓡの本質です。

まとめ:自分との関係を整える2つの柱

  • 自己承認は、「やってきたことを自分で認める力」=行動の自信
  • 自己肯定は、「どんなときも価値ある存在と信じる力」=心の安心

この2つの力が合わさることで、他人に頼らずとも自分で自分を支えられる“本当の自己信頼”が育ち、人生をしなやかに歩むためのエンジンになるのです。

今日のあなたも、がんばっているあなたも、どちらも「大切なあなた」。
どうか、自分の力を、自分で認めてくださいね。