こんにちは!自己承認力コンサルタントの尾形さくらです。
いつもコラムをお読みいただき、ありがとうございます。

「退職を考えているのですが…」
部下からそんな言葉を聞いた瞬間、心臓がドキッとした・・・
そんなご経験のある方もいらっしゃるかもしれません。

管理職・上司として頭をよぎるのは、
「戦力が減ってしまう…」
「チームが回らなくなるかも…」
「どうすれば引き止められるだろう」

一方で、「無理に引き止めていいのか」「本人の人生を尊重すべきでは?」と葛藤する方も多いのではないでしょうか。

今回は、退職を引き止めるべきか迷ったときに考えたい5つの対処法を、自己承認力の視点を織り交ぜながらご紹介いたします。


1. まずは「感情」を整理する

部下の突然の退職の申し出に動揺し、つい感情的になってしまうのは自然なことです。
「なんで辞めるんだ!」「裏切られたように感じる」…そんな思いが湧いてくるかもしれません。

しかし、ここで大切なのは、
まず自分の気持ちを受け止め、落ち着かせること
当協会でご紹介している自己承認力の第一歩は「ありのままを認める」ことです。

感情を否定せずに
「ショックだけど、それだけ大切に思っていた証拠だな」
「動揺するのも当然。自然な反応だ」
と受け止めてみましょう。

先に自分自身の心を整理できてこそ、冷静に部下と向き合えるのです。


2. 退職理由を「最後まで聴く」

退職を申し出る部下に対して、慌てて
「辞めるなんてもったいない!」と説得してしまうのは逆効果です。
まずは部下がなぜ辞めたいと思ったのか、丁寧に聴く姿勢が必要です。

✔︎ 新しいキャリアに挑戦したい
✔︎ 今の仕事にやりがいを感じられない
✔︎ 人間関係や環境にストレスがある
✔︎ 家庭や健康上の理由

退職を考える背景は人それぞれです。
勇気を出して上司に退職の意向を伝えたときに、「自分の想いを最後まで聴いてもらえた」と感じることで、部下は上司への信頼を保ちながら次の道を考えられます。

聴き方のポイントは、否定せずに「そうなんだね」「教えてくれてありがとう」と返すこと。
これは部下の気持ちを尊重しつつ、上司としての信頼を高める行動でもあります。


3. 「本人の未来」を基準に判断する

上司としては、「人員が減る」「ノウハウが失われる」など損失が真っ先に思い浮かびますよね。
頼りにしてきた部下なら、なおさらです。
しかし、ここで大事なのは「本人の未来にとって何がベストか」を考える視点です。

もし「ただ人間関係に疲れた」「上司に相談できなかった」など改善可能な理由なら、環境調整や働き方の見直しで留まってもらえる可能性はあります。

逆に「やりたいことがある」「どうしても挑戦したい」など前向きな理由なら、無理な引き止めは部下の成長を妨げるだけです。

チームには痛手であっても、部下本人のためになるのならば、応援する覚悟を決めることも大事です。


4. 引き止めるなら「条件」ではなく「関係性」で

退職の意思を聞いて、条件交渉に走ってしまう上司は少なくありません。
「給料を上げるから残ってくれないか」
「業務を変えるからそれでいいだろう」
こういった条件交渉は、確かに一時的には効果があるかもしれません。

しかし、条件だけで引き止めても、根本的な課題は解決できないことが多いのです。
この経験をした部下がしばらくすると、「あれが気に入らないので辞めます」と
処遇交渉のために、退職を再度ちらつかせることもよくある話です。

本当に効果的なのは、部下の存在そのものを認め、必要としている気持ちを伝えること

「あなたと一緒に働けることが自分にとって大きな支えだ」
「チームにとって欠かせない存在なんだ」

このような承認の言葉を熱意を持って伝えることは、部下の心に届きやすく、自己肯定感を高めます。

留まるかどうかは結果として本人が決めることですが、「大切に思っている」という関係性のメッセージを伝えるだけで、退職の意思が揺らぐこともあるのです。


5. 退職が決まったら「最後まで誠実に応援する」

最終的に部下が退職を選んだとしても、そこからの関わり方が上司としての真価を問われます。
「どうせ辞める人だから」と冷たく接してしまえば、これまでの信頼は一気に崩れてしまいます。

反対に
「ここまで頑張ってくれてありがとう」
「あなたなら次の場所でもきっと活躍できるよ」

と承認と応援の言葉をかければ、部下は退職後も「良い上司に恵まれた」と感じます。
残されたメンバーにとっても、「このチームは人を大事にする組織だ」と安心感につながります。

退職は“終わり”ではなく、“次のステージのはじまり”です。
退職が決まった部下の送り出し方は、上司の人柄がわかりやすく出るところでもあります。


まとめ:引き止めるかどうかより大事なこと

いかがでしたでしょうか。
「部下の退職を引き止めるべきか、それとも引き止めないか」
大変悩みますが、これは状況によって答えが変わります。

けれども一つ言えるのは――
大切なのは「引き止める・引き止めない」という選択そのものではなく、部下との関係性をどう守るかです。

✔︎ 感情を整理し、冷静に受け止める
✔︎ 部下の理由を最後まで聴く
✔︎ 本人の未来を基準に判断する
✔︎ 条件ではなく関係性で引き止める
✔︎ 決まったら最後まで誠実に送り出す

これら5つのステップを意識するだけで、上司としての在り方が大きく変わります。

そして同時に、自分自身も「ここまで部下を育て、共に働いた自分」を認めましょう。
自己承認力を高めることで、部下の選択を受け止める「心の余裕」が生まれます。

過去には「退職を相談されなかったときの対応」についてもまとめています。
状況による違いを知りたい方は、こちらのコラムもぜひご覧ください。

「部下の退職」という出来事を、ただの損失で終わらせるのではなく、
「お互いの次の成長につなげる機会」にしていきましょう。

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございます!
また次回のコラムでお会いしましょう(^^)